20.思い届けて
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マガナミの視界は不安定に揺れていた。
焦点が定まらず、二重、三重に激しくぶれる。
ひどく耳鳴りがしている。
シカマルの声の残響だろうか。
シカマルの言葉は、全身に鋭く刺さった。
張り裂けそうなほど痛かった。
身体の震えが止まらなかった。
「マガナミ」
アスマが労わるように肩に手を置いた。
マガナミは大きく肩を震わせる。
恐る恐るアスマに視線を合わせた。
「私…」
縋るように、置かれた手に自分の手を重ねる。
「あまり気に病まんでいいさ」
マガナミは激しく頭を横に振った。
その場に崩れるようにしゃがみこむ。
穏やかなアスマの声が降ってきた。
「シカマルは、お前が勝手にその場を離れたから怒ってるんじゃない。どうしてシカマルがあんなに怒ったか、わかるか?」
マガナミは、今度は縦に大きく首を振る。
「私…」
あの時、自分は何を考えていた?
自分は見捨てられたんだ。
みんなに置いていかれたんだ。
そう思って、自分の境遇にショックを受けていた。
「自分のことばっかり…!」
みんなの身に危険が迫っているのではないかなどということは、考えもしなかった。
「みんな私のために…!」
チョウジも、いのも、シカマルも、危険な目にあっていて、チョウジは怪我までしていた。
にもかかわらず、彼らは必死に自分のことを探していたのだ。
まだそこで自分が待っていると信じて。
「なのに私…みんなを信じなかった!」
――お前の勝手な行動が他の仲間にどれだけの危険をもたらすか、わかんねーのか!
自分のことを仲間だと思ってくれていた彼らを。
責めてほしくて、マガナミはアスマとその側にいたカカシを見上げた。
けれど二人は、顔を見合わせてゆるりと笑っている。
「それがわかってるなら、大丈夫だね」
彼らの笑顔が辛くて、マガナミはまたかぶりを振った。
「大丈夫。チョウジならきっと大丈夫だよ」
カカシがそっと囁いた。
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