生きている意味

18.こころの泉


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太陽の陽射しが目に痛い。

気温も高く、少し歩くと身体が汗ばむほどだ。

もう季節は夏といっていいだろう。

マガナミは買い物のため商店街を歩いていた。

未だに外を出歩くのは苦手だ。

今にも自分を指差され、大声で罵られるのではないかと気が気ではなかった。

けれど、あの家族の役に立てるなら、と地面を睨む。

地面ばかり見ていたのだから当然といえば当然だが、思い切り何かとぶつかった。

「おっと」

すぐに反応がある。

どうやらぶつかったのは人のようだ。

マガナミは慌てて顔を上げた。

謝らなくちゃ。

そこにいたのは、忍の装備を身に付けた二人の男性だった。

一人はがっしりした体型のあご髭を生やした男性、もう一人はやせ型で顔をマスクで覆った男性だ。

どちらも背が高い。

そのうち、あご髭の男性の方にぶつかってしまったらしい。

早く謝罪しなければ。

そう思っているのに、身体の大きな男性二人に見下ろされて、マガナミは固まってしまった。

上からの視線が、自分を突き刺しているように思われて恐かった。

不注意で村の男にぶつかった時のことを思い出す。

ひどく殴られ、しばらくまともに動けなかった。

この人たちも、自分を怒鳴り散らし、殴るかもしれない。

「あ、あの…」

あご髭の男性が腰を屈めた。

「んー?」

マガナミはいよいよ縮み上がって口をパクパクさせる。

その時、後ろから声が投げられた。

「あれー?アスマ先生!カカシ先生!」

女性の声だ。

つい最近聞いたことがある。

「何してんの?…って、あれ?マガナミじゃない!」

そうだ。

シオンの花をくれた人…山中いのと言っていた。

「なに?あんたガッチガチに固まってんじゃない!ちょっとアスマ先生!マガナミに何したのよ!?」

アスマと呼ばれたあご髭の男性はギョッとしてかぶりを振る。

「い、いやぁオレは何も…!なぁ、カカシィ!…カカシ?」

マガナミは慌てていのの服を引く。

「ち、違う。私が、ぶつかって…」

いのはマガナミの言葉に大きく頷いた。

「あぁー、熊みたいなおっさんにぶつかっちゃってびっくりしたのね」

「おい、オレのことか、そりゃあ?」

「カカシ先生じゃないことは確かよ。って、カカシ先生?」

カカシと呼ばれたマスクの男性は、心ここにあらずといった様子でうつろな表情をしている。


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