生きている意味

12.流サワト


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昔から、風のような男だった。

無国籍というか、根無し草というか、どこまでもマイペースで、自由を感じさせる男。

アカデミー時代、よく授業をサボるメンバーリストにサワトの名前も挙がっていたが、彼は誰かとつるんで授業を抜け出すわけではなかった。

気づくといつの間にか姿を消していて、授業が終わる頃になるとちゃっかり席に座っている。

イルカ先生が途中で探しに出掛けても、彼だけは見つかったことがなかった。

けれど近寄りがたかったわけではない。

話してみればなんてことはない、おちゃらけていてひょうきんな、歳相応の男だった。

休み時間になれば近くの友人たちとふざけあっている姿もよく見かけた。

シカマルは、サワトと何度かアカデミーの屋上で一緒になったことがある。

「なあ、お前いつもどこ行ってんだ?」

「んー、気の向いた場所?」

「例えば、ココか?」

「そう。例えば、アカデミーの屋上」

「今度、こっそり抜け出すコツ教えてくんねーか」

「簡単だよ」

「んなこと言っても、イルカ先生、抜けてるように見えて意外と隙ないぜ?」

「君たちが怒られてる隙に抜け出すんだ」

「………」



卒業試験を終え、班分けの発表があったあの日。

通常三人一組のはずの班員だが、第十班は人数合わせで四人だった。

集められたメンバーを見て、サワトはのんびりと笑った。

「ボクら、人数合わせの寄せ集めだねー。まあその方が気が楽ってもんだよね。これからよろしく」

この台詞に、シカマルは吹き出し、チョウジは表情を明るくし、いのは何言ってんのと怒りの声を上げた。

面倒くさがりのシカマルと控えめなチョウジ、そして勝ち気ないの。

いまいちまとまりに欠けた彼らのバランスを取っていたのがサワトだった。

しがらみに囚われず自由に振舞う彼はシカマルとよく気が合ったし、角張ったところのないさらりとした態度がそうさせるのか、彼の前ではチョウジも気を使っていないようだった。

いのもサワト相手だと最後は肩を竦めながらも納得してしまう。

彼の飄々とした態度と物言いは、どこか人の毒気を抜くようなところがあって、どこか人を安心させるようなところがあった。





彼のこの性格は、もちろん今も健在である。








「で、長期任務は無事終わったのかよ」

「まあね。今から報告行くトコ」

「そうか、ご苦労さん」

「いのはもう帰ってる?」

「まだだ。そういや出掛けたのはお前と同じくらいの時期だったか」

「そう。さっき、チョウジとアスマ先生には会ったんだ。今度ゆっくり話そうよ」

「そうだな」

軽い挨拶を交わすと、じゃあ報告が残ってるから、と手を振ってサワトは走っていった。

シカマルは彼の去っていった方向に目を向ける。

そうか、あいつ帰ってきたのか。

今まで彼がいた場所に視線を戻すと、そこにはまだ彼の濃密な気配が漂っていた。

夕暮れは少しずつ闇へとその姿を変えてゆく。





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