生きている意味

12.流サワト


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シカマルは頭を掻いた。

ここまで考えてみてわかったこと、それは、マガナミを見つけた時からほとんど状況は変わっていないということだった。

まあ、侵入者の可能性については五代目が捜査・警戒に当たってくれる。

マガナミについては、ただでさえ警戒心の強い性格のようだ、情報を聞き出すには時間が掛かるだろう。

もう少し、様子を見るしかねぇよな。





「シカマル」





突然目の前で自分の名を呼ぶ声がした。

少しだけ驚いて顔を上げると、そこには、ひょろっとした男が立っていた。

歳は自分と同じくらいのようだ。

赤い髪、オレンジ色の瞳。

もっとも、夕日の光のせいで正確な色はわからない。

じんべえ風の上着に、ダボッとした七分丈のズボンをはき、腰に帯を締めている。

どことなくしまりのない顔だ。

それはシカマルも同じであろうと突っ込まれるかもしれないが、シカマルと彼の違いは、片やブスッとした顔をしており、片やへらっと笑っているところである。

建物の合間から射した夕日がその男を照らす。

男は、親しげな様子で話を続けた。

「久しぶりだね。元気だった?」

シカマルは眉間にしわを寄せて記憶を探る。

知り合いか?

しかし、しばらく男を眺めてみても、ピンと来るものは何もない。

…知らねぇやつだよなぁ。

「元気だけどよぉ。つか、お前誰だ?」

男は目をしばたたかせた。

ポカンとした表情を浮かべている。

「何言ってんのシカマル。君がそんな冗談言うなんて珍しいね」

そう言われても、知らないものは知らない。

シカマルも当惑して男を見る。





その時、頭の中にぼんやりとした違和感が沸いた。

くゆる煙のような、不確かな違和感だ。

その違和感は、頭から胸、手先、足先へ、ゆっくりと染み渡るように巡っていった。

血液に、チャクラに、皮膚に、少しずつ混じっていくような感覚がある。

やがて乾いた草に水が行き渡るように、じんわりと身体中に馴染んだのであった。





そうだ、何を寝ぼけたことを言っていたのだろうか。

シカマルは、なぜ自分があんなことを言ったのか、不思議で仕方がなかった。

目の前にいる男、こいつは、第十班の一員ではないか。



流サワト。



アカデミー時代から共に日々を過ごした同期であり、第十班の仲間であり、親友である。

「…ああ、わりぃなサワト。ちっと考え事しててよ」

「ふぅん、まぁいいけどさ。あんまりつまんないことばっか考えてると、面白みのない人間になっちゃうよ」

サワトはさっぱりと笑った。

彼の笑顔は、陽をたっぷり浴びて乾いた洗濯物のように清潔だ。

「ほっとけ」

シカマルもつられるようにしてニカッと笑った。



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