生きている意味

11.マガナミ -ふるさと-


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夕食が済み、風呂を進められたマガナミは、おろおろと目を泳がせて、せめて自分は最後にと視線を伏せた。

すると、ヨシノが、遠慮はいらないのよと優しく微笑み、何かを思いついたようにチョイチョイと手招きした。

呼ばれるままについていくと、ヨシノは自室に入ってゆく。

部屋の前でまごまごしているともう一度手招きをされたので、ためらいながらも中に足を踏み入れた。

「これ、私のお古で悪いんだけど、使ってちょうだい」

差し出されたのは何着かの服だった。

着物テイストのものや、動きやすいハーフパンツ、襟付のノースリーブのシャツなど、マガナミに合いそうなサイズのものがピックアップされている。

差し出された服をどうしてよいのかわからず、マガナミはヨシノを見た。

なかなか受け取ろうとしないマガナミの手に服を押し付けて、ヨシノはいいから、とウインクする。

この人たちが何を考えているのかわからない。

私に何を求めているのかわからない。

マガナミは押し付けられた服に目を落とす。

この行動の裏にはどんな要求があるのだろうか。

突きつけられる代償は?

…いや、考えるのは止そう。

何を言われたところでやらなければならないことに変わりはない。

与えられた部屋に戻り、頭からすっぽり布団を被る。

何か裏があると思っていれば間違いはない。

どんなことが起きても、驚かない。

どんな裏切りがあっても、動揺しない。

だってそれは起こるべくして起こるものだから。

ここにきて最初に思ったことを今一度確認する。

それが私の宿命。

生まれてしまったタブーの定め。

最初からそう思っていれば、被害は最小限ですむもの。

そんなことを考えているうちに、いつの間にか、マガナミは眠りに落ちていた。






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