09.マガナミ -居場所-
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マガナミは硬い表情で一礼すると、女性が障子の戸を閉めて立ち去るのを確認して、また、部屋の片隅にうずくまった。
この後、どんな仕打ちがあっても、驚かない。
動じない。
あの人たちが、裏で何か考えていることは、明白なのだから。
平然と、黙々と、感情は出さず、空気のようにやり過ごすの。
今までと同じように。
でも。
別の方向から微かな声が響く。
ここは、ミナ地じゃない。
あの人たちは、私を知らないみたいだった。
ならば、今までとは違う何かがあるのではないだろうか。
その声を振り切るように首を振る。
いいえ、知らない振りをしているだけで、本当は私を知っているかもしれない。
穢れた子どもである、私を。
用が済んだら、村人に引き渡す話になっているのではないだろうか。
もしかしたら、外でもう、すれ違っていたかもしれない。
一体何にすれ違うというの?
村人に?
本当にそんなことがあると思っているの?
あなたがあの時見た光景。
あれは何を意味していた?
ちらりとある光景が頭を過ぎる。
私のせいでたくさんの人が不幸になった。
私自身は、周りに影響を及ぼすような、そんな力なんて持ち合わせてはいないというのに。
ならば、なぜ、私の周りの人々は私を呪って顔を歪めるのだろうか。
それは、私が本来、いるはずのなかったものだからだ。
私の存在が、母の運命まで大きく変えてしまった。
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