生きている意味

09.マガナミ -居場所-


(8/8)


マガナミは硬い表情で一礼すると、女性が障子の戸を閉めて立ち去るのを確認して、また、部屋の片隅にうずくまった。

この後、どんな仕打ちがあっても、驚かない。

動じない。

あの人たちが、裏で何か考えていることは、明白なのだから。

平然と、黙々と、感情は出さず、空気のようにやり過ごすの。

今までと同じように。





でも。





別の方向から微かな声が響く。






ここは、ミナ地じゃない。

あの人たちは、私を知らないみたいだった。

ならば、今までとは違う何かがあるのではないだろうか。





その声を振り切るように首を振る。





いいえ、知らない振りをしているだけで、本当は私を知っているかもしれない。

穢れた子どもである、私を。

用が済んだら、村人に引き渡す話になっているのではないだろうか。

もしかしたら、外でもう、すれ違っていたかもしれない。





一体何にすれ違うというの?





村人に?

本当にそんなことがあると思っているの?

あなたがあの時見た光景。

あれは何を意味していた?





ちらりとある光景が頭を過ぎる。





私のせいでたくさんの人が不幸になった。

私自身は、周りに影響を及ぼすような、そんな力なんて持ち合わせてはいないというのに。

ならば、なぜ、私の周りの人々は私を呪って顔を歪めるのだろうか。

それは、私が本来、いるはずのなかったものだからだ。





私の存在が、母の運命まで大きく変えてしまった。





(8/8)

- 51/232 -

[bookmark]



back

[ back to top ]

- ナノ -