01.邂逅
(3/3)
つらつらと考え事をしていると、看護師が一人、こちらに歩いてきた。
「ああ、女の子、なんとか乗り切ったよ」
「そうっスか。そりゃよかった」
「けど、まだ油断は出来ないよ。相当衰弱してる。場合によってはこのまま持ち直せないかもしれない」
「そう、なんすか」
正直、リアクションに困った。
まったく素性の知れない少女の安否だ。
看護師はしばしの沈黙を少女への気遣いだと思ったらしく、笑みを作ってシカマルの肩を叩いた。
「心配だったら少し見て行ってあげて。里の周辺には連絡を入れてもらったけど、今のところ彼女の知り合いがやってくる様子もないし。ホント、どこの子かしらねえ」
305号室よ、と手を振り去ってゆく看護師に会釈をして、シカマルは少女の病室へと向かった。
305号室は階段を右に入って、一番奥の部屋だ。
ドアを静かにスライドさせ、中の様子を伺う。
今この部屋にいるのは少女だけのようで、窓際のベッドの他は全て空だった。
ベッドを覆うようにして閉まっているカーテンを少しめくり、中で寝ている少女の様子をうかがう。
頭には包帯、頬にはガーゼが当てられていた。
身体も同じように、いたるところに包帯が巻かれているのだろう。
顔が白い。
外見から生気は感じられず、もうすでに事切れているかのようだ。
ピクリとまつげが動かなければ看護師を呼びにいっていたかもしれない。
改めて少女を見る。
ごく普通の、同年代の少女だ。
布団を被り、昏々と眠りこんでいる今わかるのは、彼女の髪が少し赤みがかった茶色をしているということくらいだ。
あの時の威圧的な雰囲気は微塵も感じられない。
まぁ寝てるときなんて、誰でもそんなもんだけどな。
とにかく、今の状態では目を覚ますのはもう少し先だろう。
シカマルは静かに病室を去った。
(3/3)
*←|→#
[bookmark]
←back
[ back to top ]