生きている意味

08.マガナミ -風になりたい-


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『昔、人々がまだ愛を知らなかった頃、ミナ地には争いがあふれていました。

人々は互いを憎み、妬み、己の欲望に任せて殺戮を繰り返しました。

ミナ地は荒れ果て、もはや動物や草木は死に絶えようとしていました。

それを見ていた神は非常に悲しみ、一粒の涙をこぼしました。

その涙は地上へと落ち、洪水となってミナ地のすべての人々を洗い流しました。





神は、人々にもう一度チャンスを与えることにしました。

ミナ地に、二人の人間、ダカイとナギを遣わし、そして二人に「愛」を授けました。





ダカイとナギは荒廃し切ったミナ地に絶望しました。

呆然とたたずむ二人の前に、リスが小さな木の実を置いてゆきました。

サルが果物を置いてゆきました。

トラが乗れと促すように腰を低くしたので、背にまたがると、きれいな水辺へと辿り着きました。

ダカイとナギは、自分たち人間がいかに愚かだったかを知りました。

そして自分以外のものを慈しむ心を知ったのです。





やがて二人の間に子どもが生まれ、子はカルヴァと名付けられました。

カルヴァは心の優しい男子で、動物や草木と会話することができました。

三人とミナ地に住まう生き物たちは幸せに暮らしていました。





ある日、外の土地からミナ地に人間がやってきました。

その人間は、地面になった果実を葉ごとむしり取り、木になった実を枝ごともぎ取り、穢れた身体で泉を汚しました。

そして、動物たちと遊ぶカルヴァを見つけると、襲い掛かってきたのです。

ダカイは、カルヴァとナギと動物たちを守りながら戦いました。

しかし、やがて力尽き、命を落としてしまいました。





神は怒りました。

怒りは稲妻となり、その人間を打ちました。

今にも命を落としそうになっていたカルヴァとナギは命を取り留め、泣きながらダカイとその人間を埋めました。

神はカルヴァに言いました。

この地の平和を守るためには、他の土地の人間と交わってはならない。

この土地の生き物は慈しまなければならない。

さすればわが力の一部を授けよう、と。

カルヴァは神に誓いました。

私はこの地の平和を守りましょう。





神はカルヴァに人々の身を守る妖しの術を授けました。

カルヴァは神の言いつけを守り、ミナ地に平和をもたらしました。

やがてカルヴァに子どもが生まれました。

カルヴァが死ぬと、カルヴァの名と力を子どもが受け継ぎました。

こうしてミナ地の一族は、カルヴァの指導の下、平和な生活を送ったのです。』



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