生きている意味

08.マガナミ -風になりたい-


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――風に





私は、風になりたい。





みんなの頬を優しくくすぐり、鳥の長旅を助け、花の種を飛ばすの。


季節を運び、恵みの雨を呼び、日の光を大地に捧げよう。





私はどこにもいなくて、どこにでもいる。





そう、私は、風になりたかった。





自分という人格を忘れてしまいたかった。


消してしまいたかった。





私を解放してほしかった。





私さえいなければ、私は存在していられる。








幸せに、なれる。








あの光の下へたどり着ければ、きっと、それが叶うはず。










そう、光へ――










光へ。










手を伸ばして、光をつかんだ。










――でも










目が覚めたら、私はそこに、いた。


白くて四角い、箱の上。


この両手。


この手を動かしている意識。


疲れ果てた心は誰のもの?










行き着いた先は、自分の身体だった。










神よ。


あなたはここまで私のことがお嫌いなのですか。










あの時、私は、絶望の沼に沈んでいく自分の心をただ呆然と感じていた。







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