生きている意味

07.奈良家へ


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あれから数日、日に一度は病院に顔を出すようにした。

チョウジとサクラも、暇を見て足を運んでくれたようだ。

マガナミの様子はというと、あまり変化は見られない。

しかし、体調は順調に回復したらしく、顔色はだいぶよくなっていた。





今日はマガナミの退院の日だ。





305号室のドアを開けると、いすに座っていたマガナミが顔を上げた。

ベッドはすでにきれいに片付けられている。

今まで病院の寝巻きを着ていた彼女も、寄付されたお古であろう、水色のシャツに紺のハーフパンツという格好だった。

「調子はどうだ?顔色はすっかりいいみてェだな」

シカマルが軽く笑う。

シカマルの言葉に、マガナミは控えめに頷いた。

「今日はチョウジとサクラは用事があって来らんねーけど、お前によろしくってよ。退院おめでとうだとさ」

マガナミは、目をぱちぱちとしばたたかせた。

マガナミがほとんど口を開かないことにももう慣れたもので、シカマルはそのまま話を続ける。





「で、これからどうしたいか、答えは出たのか」





一瞬の間の後、マガナミは、困ったように目を伏せてしまった。

やっぱりか、とシカマルは内心苦笑する。

予想していた通りの反応である。

シカマルの様子を伺うように、マガナミはちらりちらりと視線を動かす。

予定通り、うちで面倒を見ることになりそうだ。





「決まってねんなら」





声に出した瞬間、スッと違和感が頭を掠めた。

マガナミの口元がわずかに動いた気がしたのだ。





今、何か言おうとしたか?





しかし、勢いのついた言葉はそのまま喉元を流れる。

「うちに来いよ。もう話は通してある。恐ェ母ちゃんとだらしねえ親父しかいねーから、待遇は期待できねーけどな」

マガナミは僅かに驚いた顔をした。

どう受け止めてよいのかわからないといった様子で、さまざまな方向を視線がさまよう。

シカマルは、今度は本当に苦笑した。

「別に取って食いやしねーよ。このままほっぽり出すわけにもいかねーし、もしかしたらお前に危険があるかもしれねーから、様子を見ようってだけの話だ。どうだ、それでいいか?」





しばらくの間があった。





マガナミは逡巡を飲み込むように、喉を鳴らす。

そして、静かに、はいと返事をした。





シカマルは、マガナミの返事を受けてきびすを返す。

「んじゃ、早速行くとするか。準備はいいか」

マガナミが小さく頷き、ゆっくりと立ち上がる。

二人は305号室を後にした。





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