生きている意味

06.サクラと少女と拙い会話


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室内に入ると、ベッド周りのカーテンは開いており、少女がベッドに腰掛けていた。

起き上がれるまでに回復しているようだ。

しかし、頭や腕に巻かれた包帯が痛々しい。

窓の外でも眺めていたのだろうか。

ドアの開く音に反応してパッと顔だけこちらを振り返る。

「こんにちは」

サクラがにっこりと微笑む。

それと反比例するかように少女の表情は固まっていった。

ベッドから飛ぶように身体を起こす。

「よお、ちゃんとメシ食ったかよ」

シカマルもサクラの後ろから声をかける。

シカマルを見て少女が反応した。

どうやらシカマルのことを覚えているようだ。

サクラも彼女の反応に気づいたらしく、シカマルを前に押し出す。

「シカマルには昨日も会ったのよね。はじめまして、私は春野サクラです。今日はあなたのお見舞いに来たの」

これ、よかったら食べて、とサクラはバスケットを差し出した。

しかし、少女は受け取ろうとしない。

小さく一歩、後ずさった。

「じゃあここに置いておくわ」

気にする素振りを見せずに、バスケットをサイドテーブルに乗せて、サクラは柔らかく声をかけた。

「体調はもういいの?ずいぶんひどい怪我だったって聞いたけど」

サクラの視線を受けて、少女はそれから逃げるように目を伏せる。

両手を胸の前で硬く握り締めた。

警戒を解く気配は見えない。

こりゃ昨日と大差ないな、などと思っていると、サクラにひじで突かれた。

見ると、あんたも何か言いなさい、と目が訴えている。

そうは言っても、シカマルには気の利いた言葉など思い浮かばない。

「あー、昨日も言ったが、別にこっちはあんたに危害を加えるつもりはねーんだ。もう少し楽にしろよ。とりあえず、座らせてもらうぜ」

いすを二脚持ってきて、ベッドの脇に並べ、サクラと共に腰を下ろした。

少女にベッドに戻るように促す。

ためらっていた少女も、身体の疲れも手伝ったのだろう、しばらくして、おずおずとベッドに戻った。





シカマルとサクラにホッとした空気が流れた。

どうやらようやく落ち着いて話が出来そうだ。




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