06.サクラと少女と拙い会話
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任務報告を終えたシカマルは、病院へ向かった。
待ち合わせ場所は、病院前を指定してある。
病院に近づくと、すでに到着していたサクラが手を振ってきた。
片手にはバスケットを下げている。
こちらも小さく片手を上げた。
「わりーな、呼び出しといて待たせちまった」
「いいのいいの。おかげで午前の修行が早く切り上がって助かったわ」
サクラは軽く笑った後に、両腕を抱えて小さく震えた。
表情から見て、午前の修行を思い出したらしい。
…トラウマになってんじゃねーか。
シカマルは密かにサクラに同情した。
「じゃあ行きましょうか」
歩き出そうとしたサクラだが、ふと、その足を止めてシカマルを振り返った。
「そうだ。これ、綱手様からも念を押すように言われてるんだった。こうやって、お見舞いに付き合うことは全然構わないんだけど、それ以上のことはたぶんできないと思う。昨日綱手様が言ったように、私は修行で綱手様に付きっ切りだし…」
シカマルも薄々そうであろうとは思っていたことだが、どうやら釘を刺されたらしい。
サクラはサクラで自分のすべきことをしている。
それを邪魔するわけにも行かないだろう。
「ああ、十分だ。助かるぜ」
行くか、とシカマルが声を掛け、二人は院内に入っていった。
受付で少女への面会を申し出ると、看護師が複雑そうな表情を見せた。
サクラが不思議そうな顔をしてシカマルを見るので、自分にもわからないと肩をすくめる。
「どうかしたんスか」
「いえね、あの子、全然しゃべってくれなくて。すごく私たちを警戒してるみたい。あなた、あの子の責任者なんですってね?あの子の心をほぐしてやってちょうだい」
シカマルとサクラは顔を見合わせる。
ということは、昨日とあまり状況は変わっていないということか。
シカマルはげんなりした。
「そんな顔しないの。ほら、行くわよシカマル」
サクラに促され、305号室を目指す。
ドアの前にたどり着くと、サクラが一度シカマルを振り返ってからドアを開けた。
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