06.サクラと少女と拙い会話
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シカマルは目を覚ました。
まだぼやける瞳に写るのは、土砂降りの里の風景ではなく、自分の部屋の壁だ。
今のは、あの異常気象の夢だ。
そういえば、避難所へは一人で行ったっけな。
ヨシノ、シカクと別れたシカマルは、避難の列に加わり、誘導に従って避難所へ向かった。
そして、雨の中をゆっくり歩きながら、何かを気にかけていた。
そうだ、あの時、確か女の行方を気にしていた。
里に不慣れな女が、この混乱の中できちんと避難できているのだろうか、と。
里に不慣れな女。
誰のことだ。
自分が気にかけていたことは覚えているのだが、それが誰のことなのかはわからない。
しばらく記憶を探っては見たものの、やはり思い出せる気配はなかった。
そのうち、考えるのが面倒になってきた。
まあ、必要があればそのうち思い出すだろ。
ベッドから降りて寝巻きを着替える。
今日はサクラと例の少女の見舞いに行くことになっている。
約束の時間は午の刻、正午だ。
それまでに今日の任務を片付けてしまうつもりだった。
与えられる任務は暗号の解読と聞いている。
超機密文書というわけでもないので、午前中いっぱいあれば片がつくだろう。
問題は少女のほうだ。
サクラについてきてもらうことで、少しでも前進すればよいのだが。
昨日は目を覚ましたばかりということもあってか、相当混乱しているようであった。
せめて落ち着いて話ができるようになれば、希望も見えてくるというものである。
こればっかりは今考えても仕方ねえがな。
とりあえず、やれることからやるだけだ、と気を取り直す。
腹も減ったし、まずはメシだ。
シカマルは食卓へ向かった。
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