生きている意味

31.手紙(完)


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『シカマルへ』



この手紙、読んでくれていますか?

だとしたら、小さなあなたはちゃんと手紙をとっておいてくれたんだね。

よかった。

元気にしてますか?

まだ、わたしのこと、おぼえてますか?

おぼえててくれるといいんだけど。

この手紙を書いているのは、あなたと別れてまだ数週間しかたっていないころですが、なんだかもう何十年も会っていないように思えます。

けれど、わたしは今も、あなたの姿を目の前に見ることができるよ。

シカマルには、わたしの姿が見えますか?

遠い遠い空の向こうにわたしはいて、遠い遠い空の向こうにいるあなたのことを思っています。

空はいまも変わらず、わたしたちをつないでいるんだよ。



こんなにお世話になったのに、あんな形でとつぜんみんなのそばを去ってしまいました。

それが心残りです。

もっとちゃんとお礼が言いたかったな。

もし、まだみんながわたしをおぼえていたら、伝えてください。



そちらの天気はどうですか?

気持ちよく晴れていますか?

こっちも晴れています。

けれど、すこししっけがまじっているみたい。



もうすぐ雨がきます。



さいごの仕事をする前に、シカマルに手紙をかくことにしたの。

言いたかったけれど言えなかったことがたくさんあるから。

ぜんぶ書けるかどうかわからないけれど、すこしでも多く、わたしの気持ちを伝えたい。



シカマルには、いっぱいお礼を言いたいの。

何度も、何度も、お礼を言いたい。

わたしを助けてくれてありがとう。

道ばたに倒れていたわたしを病院に運んでくれてありがとう。

あのとき、シカマルが助けてくれなかったら、わたしの未来はなかった。

安らぎも知らなかった。

よろこびも知らなかった。

しあわせも知らなかった。

ぜんぶ、ぜんぶ、シカマルがおしえてくれたんだよ。

あなたとであったころのわたしは、こんな気持ちが存在することすら知らなかった。

でも、知った瞬間、わかったの。

わたしはこれを求めてたんだって。

知りたかった。

ずっとずっと、知りたかったの。

安らぎも、よろこびも、しあわせもぜんぶ。

知りたかったことぜんぶ、あなたがおしえてくれた。

ありがとう。


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