生きている意味

30.風になる


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「じゃ、呼んでっから」

シカマルは踵を返す。

どうやら本当にお別れのようだ。

「シカマル」

サラは慌てて呼び止めた。

「まーだあんのか?」

シカマルは苦笑いして振り返る。

サラはシカマルに近寄っていって、彼の手を取った。

「これ、あげる」

シカマルは眉を顰めた。

「花?オレ興味ねーよ」

「いいから。出会えた記念」

強引に押し付ける。

「今更かよ」

「いらなかったら手紙と一緒にしておいて」

シカマルは握らされた紫色の小さなの花の扱いに困って頭を掻いたが、最後は結局折れた。

「まあ…いいけどよ」

サラはへへ、と笑った。

そして軽く手を振る。

「『また』ね」

せり上がってくる熱い想いを必至で押しとどめる。

あなたが、この先の未来でしてくれることに、深く感謝しています。

言葉ではいい尽くせないほど、感謝しています。

あなたへの恩を少しでも返すために、私、頑張るね。

未来で、待っていて。

シカマルは、おー、と手を振って階段を下りていった。

彼の頭が下の道を通り過ぎてゆく。

やがて、その小さな背中が見える。

ポケットに乱暴に突っ込まれた両手。

弓なりに曲がった背中が、少しずつ遠ざかってゆく。

サラは、その姿がすっかり見えなくなるまでジッと見守っていた。

それからしばらくしておもむろに立ち上がる。



行かなくちゃ。



さあ、時間だ。





20160622


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