生きている意味

30.風になる


(9/10)


「おーい、シカマルー!」

下の道から声が聞こえた。

チョウジだ。

「おじさんが探してたよ。ちょっと帰ってこいってさ!」

シカマルは片手を振る。

「おーサンキューな!」

シカマルはサラを振り返った。

「じゃ、行くぜ」

階段へ向かおうとするシカマルをサラは呼び止める。

「ちょっと待って」

シカマルは立ち止まる。

サラは手に持っていたものをスッと差し出した。

「もう一つお願いがあるの」

シカマルはサラの手元に視線を落とす。

「手紙?」

「届けてほしいの」

シカマルは手紙を受け取って表裏を眺めた。

そして肩を竦める。

「知らねーぞ?こんなやつ」

サラははっきりと頷く。

「大丈夫。その時がくれば」

「きっとわかるってか?」

シカマルがその後を継いだ。

サラはクスクス笑う。

「そう」

「ったく、自分で渡せねーのかよ」

サラは頭を振った。

「出来ないの。本当はそうしたいけど」

シカマルはもう一度手紙に目を落とし、ため息をつく。

「名前付けろなんつーへんてこな頼みといい、人使いが荒いんじゃねーの?」

サラは胸の前で手を合わせた。

「お願い。そのかわり、私もあなたの役に立つことをするから」

「役に立つこと?」

「うん」

「何だよ、そりゃ」

サラは意味ありげな笑みを浮かべる。

シカマルはすぐに悟って肩を落とした。

「それも時がくればわかるんだな」

「そう」

サラはにっこり頷く。

「はいはい」

「ありがとう」


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