生きている意味

29.木ノ葉の里


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サラは、いのが慣れない手付きで一生懸命包んだシオンを受け取った。

そして、それをそのままいのに差し出す。

いのはキョトンと首を傾げた。

「いのちゃんにプレゼント。出会いの記念に、ね。シオンの花言葉は『君を忘れない』でしょう?今日の出会いが忘れられない出会いになるように。はい!」

いのは満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう!」

「どういたしまして」

サラも負けないくらい微笑んだ。



いのに初めて会ったとき、いのはこうしてシオンの花をくれたね。

嬉しかったんだ。

だから、お返し。



大きく手を振るいのに手を振り返して、サラは店を出る。

歩を進めてしばらくしたところで、背後から元気な声が聞こえてきた。

「いのちゃーん!遊びにきたよー!」

サラは反射的に振り返る。

桃色の髪を揺らしながら、やまなか花に入っていく少女の姿が見えた。

思わず口元が緩む。

相変わらず仲良しだね。

「サクラ!」

「あれ?いのちゃん、それなんの花?」

「これはシオンって言ってぇ…」

心の中でサクラにも手を振って、再び歩き出した。





ゆっくりと里を一周したサラの足は、自然とあの場所へ向かう。

シカマルが特等席だと言っていたあの大きなベンチだ。

建物の脇にある外階段を登ると、そのベンチは見えてくる。

人影はない。

しばらくは一人で堪能できそうだ。

サラはベンチに身を投げ出すと、かつて彼がそうしたように仰向けに寝転んで空を仰いだ。

ポニーテールがちょっと邪魔だが気にしない。

視界に入るのは青一色、広大な空だけだ。

気持ちがいい。

ポツリポツリと浮かぶ雲に彼を思う。

元気かな。

今は、彼と自分は大きく隔たってしまった。

けれど、この空を見ていると案外近くにいるのではないかという気がしてくる。

だって、彼が眺めているのも多分、同じ空だから。

息を吸い込んで目を閉じる。

いい風だな。

しばらくこの空気を楽しんだ。





耳が砂を踏む音を拾った。

予感のようなものがあって、サラはそのまま目を瞑っている。

「そこ、オレの特等席なんだけど」


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