生きている意味

29.木ノ葉の里


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外は清々しい良い天気だった。

大きく吸い込んだ空気が身体を隅々まで清めてくれているようで、気持ちよさに目を瞑った。

再び瞳を開くと、サラは息を飲んだ。

里は美しかった。

陽の光が優しく里に降り注ぎ、その光を受けて一枚一枚の葉が艶めく。

その葉を揺らす風が光を瞬かせ、里中の木々に宝石がなっているみたいに見えた。

その宝石の瞬きに子どもたちのキラキラした歓声が重なる。

変わらない。

この里はずっとこうなんだ。

今も昔も、そして未来でも。

この里がみんなを守り、育んでいる。

そして、そんな里を自分が守るのだ。

サラは空を見上げた。

この上なく誇らしい気分だった。



里の街並みは、サラの知っているものとは少々違っていた。

そういえば、自分が里に来る少し前、敵に攻め入られて街の大部分が破壊されたとシカマルが言っていた。

ようやく復興したばかりなのだと。

これは攻め入られる以前の街並みなのだろう。

でも、要所要所に知っている店が見える。

建物は変わっているが、掲げる看板は同じだ。

復興したんだ。

サラは里の生命力の強さを感じた。



やがてサラは歩く速度を上げた。

よく知った店の看板を見つけたのだ。

『やまなか花』

いののうちの花屋だ。

「いらっしゃいませ」

店の中を覗き込むと、挨拶の声が飛んできた。

しかし、その声色はどこか緊張していて固い。

レジに座っているのは小さな女の子だった。

さしずめ、初めての店番といったところだろうか。

「こんにちは」

声を掛けると、パッと笑みを浮かべてカウンターから出てくる。

「こんにちは」

「店番?偉いね」

少女は誇らしげな表情になる。

「このくらい当たり前よ!」

「お名前は?」

「山中いの!」

「そう、いのちゃんていうの」

知ってるよ。

サラはそっと心の中で囁く。

「きれいな花がいっぱいあるね」

「そうでしょ?ここにある花たちには、それぞれみーんな意味があるの!」

「花言葉?」

「そう!知ってるの?」

「少しだけ。そう、例えば…」

サラは店内を見回す。

そして一角に目的の花を見つけた。

「例えばこれ」

手に取ったのは、紫色の星型の花だ。

「シオンだ」

「そう、シオン。これ、一つくださいな」

「えっ?あっ、はい。ありがとうございます!…どうぞ!」

「どうもありがとう」


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