生きている意味

29.木ノ葉の里


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サラは深く頭を下げた。

沈黙に必死で熱意を流す。

お願い、うんと言って。

ひと呼吸おいて、カカシは小さくため息をついた。

「ま、いっか」

サラは勢いよく顔を上げる。

「ホント?」

「上にはオレが保証人ってことで話つけとくから、変なことだけはしないでよ」

「もちろん!ありがとう」

信じてくれた。

嬉しかった。

木ノ葉の人たちはみんなそうだ。

人を信じられる強さがある。

今も、この先の未来でも、それは変わらないんだなぁ。

「それで、これからどうするつもりなの?特に怪我をしてるわけでもないし、もう病院にいる必要はないんだけど」

「少し里を歩きたいんです。いいですか?」

「構わないよ。オレは仕事あるから行くけど、基本的には自由にしてもらっていいから」

サラは頷いた。

「本当にありがとう」

いや、と短く返事をして、彼は音もなく消えた。

サラは窓に顔を向ける。

そこにはすでに彼の気配はなかった。

やっぱり忍ってすごい。

ふとそばの棚をみると、サラが身につけていたものと思われるシャツとキュロットスカートと、いのからもらったネックレスが置かれていた。

いや、もう一つ、見慣れぬ巾着がある。

持ち上げるとすぐにそれが何かわかった。

「こんなにたくさん…」

お金だった。

ずいぶんとスマートに粋なことをする人だ。

サラはもう一度窓の外を見る。

ありがとう、使わせてもらいます。

サラは静かに一礼した。



さあ、着替えて出かけよう。

サラは立ち上がった。

着替えを済ませ、髪に櫛を通す。

すると窓から入ってくる風がサラの髪を巻き上げた。

このままだと少し邪魔だ。

サラは思いついて、いのからもらったネックレスを口にくわえた。

髪を高い位置で束ね、紐を数回巻きつけて固定する。

いののポニーテールを真似たのだ。

装飾がシャラと音を立てる。

これなら大丈夫。

一つ頷いて、サラは病室を後にした。


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