28.生きている意味
(9/10)
センスには恵まれていない自分だったが、せめて思いつく限りで一番いい名前を送ってやりたい。
あいつが好きだったものはなんだろうか。
一番印象に残っているのは、あいつが縁側に座って庭を眺めている姿だ。
そう、あいつは鹿威しの音色が好きだった。
それからいのからもらったネックレス。
毎日身に付けていたし、よく手に取って眺めていた。
後は…そうだ、花。
紫色で星型の小さな花をマガナミは気に入ってよく家に飾っていた。
これはいのが初めてマガナミに会った時に渡していた花だ。
──私、この花プレゼントしてもらったことあるのよね。
いつかのいのの台詞が頭を過る。
──これ、あげる。
今のは誰だ?
…そうだ、これはあいつとした最後の会話だ。
そうだ、別れ際にオレはあいつから花を渡された。
──花?オレ興味ねえよ。
──いいから。出会えた記念。
無理矢理押し付けられて、返すに返せなくて、結局持って帰った。
そういえば、あれどうしたっけな。
あの花は確か、そう、紫色の小さな花だった。
星型の形をした…。
──シオンの花言葉は『君を忘れない』。
シカマルの胸の鼓動が大きく鳴った。
きみを忘れない。
──忘れないでね。
──またね。
決まっていたんだ。
オレがマガナミと出会って、別れることは、最初から。
あいつは、どんな気持ちでこの言葉を口にしたのだろう。
あいつは、どんな気持ちで、あの花をオレに渡したのだろう。
きみを忘れない。
オレたちも、お前を忘れない。
「『シオン』だ」
(9/10)
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