28.生きている意味
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一同が絶句していると、マガナミが口を開いた。
「私、これから木ノ葉を救いに行くの」
みな、固唾を飲んでマガナミの言葉に耳を傾ける。
「みんなの過去を守りに行くのよ」
シカマルは反射的に口を開こうとする。
しかし、何を言えばいいのかわからず、結局その口を閉じた。
「すごく誇らしい気持ちでいっぱいなの。木ノ葉の役に立てることが嬉しい」
心から喜んでいることがひしひしと伝わって来て、シカマルはイライラした。
「お前じゃなきゃダメなのかよ。木ノ葉の忍は優秀だ。お前がいかなくたって、どうにかなるかもしれないだろ」
「あの日は、里には忍があまりいなかったでしょう」
そうだ。
あの日は記念式典があって、里の忍はあらかた出払っていた。
たまたま他の任務で外出していた父親が里に戻ったのも、天気が大荒れになってからだったし、おまけに住民の避難誘導に追われる中で敵の動きに気付けたかどうかは怪しいところである。
「なにもお前じゃなくてもいーだろうが」
「私が行きたいの。それに、事が起こったのは過去のことよ」
自分の発言が何を意味するのか、シカマル自身もわかっていた。
そう、マガナミの言うように、今話しているのはすべて過去の話だ。
もう、起こってしまって、決まってしまったことだ。
それを変えようとすることは、過去を変えることになるのだ。
そんなことはわかっている。
けれどあんまりではないか。
「お前自身の幸せはどうなるんだよ」
マガナミは穏やかな顔をしている。
「みんなを守れる。私、幸せだよ」
「そういうことじゃねえよ!」
マガナミは微笑んだ。
「ね、シカマル。名前をくれる?今一番の私の願いは…私の幸せは…あなたから名前をもらうこと。みんなから呼ばれる名前がほしい。忌み子じゃなくて、一人の人間としてあなたたちに呼ばれる名前がほしいの。みんなの仲間として迎えてほしい。生まれ変わりたいの」
だからお願い、そう言ってマガナミはシカマルを見つめる。
シカマルには、その言葉を覆すことは出来なかった。
覚悟を決めた。
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