28.生きている意味
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彼女は直接的な肯定はしない。
代わりに、彼女の辿った道を語った。
「私を拾ってくれたのはカカシだった。目が覚めると木ノ葉病院にいて、すぐそばにカカシがいた。カカシは何も聞かずに私の滞在許可を取ってくれて、私を木ノ葉に置いてくれたの。この頃から木ノ葉の人たちは変わってなかった」
自分のことのように誇らしげに、彼女は笑った。
「私はサラと名乗って、その日が来るまでの日々を過ごしたの」
サラ。
井染の言葉で「名もなきもの」という意味だ。
「その日って…」
「嵐が来る日」
「嵐…」
彼女は頷く。
「その時がくれば、必ずわかる」
彼女の揺らぎない眼差しに、マガナミはただ頷いた。
その時がくれば、必ずわかる。
何故なら、それは私がするべきことだから。
「私は何をすればいいの?」
マガナミのこの問いで、彼女はマガナミの答えを知る。
再び運命の重みを噛みしめるように、彼女は目を細めた。
そしてただ一言答える。
「その時がくればわかる」
マガナミは長い時間をかけて、その言葉を内に刻み込む。
そして彼女の瞳をまっすぐ見据えた。
「あなたがそういうのなら」
彼女はそれに無言で相槌を打つ。
音のなくなった空間には、役目を果たす者への励ましと、役目を終えた者への労いが満ちた。
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