生きている意味

28.生きている意味


(6/10)


彼女は直接的な肯定はしない。

代わりに、彼女の辿った道を語った。

「私を拾ってくれたのはカカシだった。目が覚めると木ノ葉病院にいて、すぐそばにカカシがいた。カカシは何も聞かずに私の滞在許可を取ってくれて、私を木ノ葉に置いてくれたの。この頃から木ノ葉の人たちは変わってなかった」

自分のことのように誇らしげに、彼女は笑った。

「私はサラと名乗って、その日が来るまでの日々を過ごしたの」

サラ。

井染の言葉で「名もなきもの」という意味だ。

「その日って…」

「嵐が来る日」

「嵐…」

彼女は頷く。

「その時がくれば、必ずわかる」

彼女の揺らぎない眼差しに、マガナミはただ頷いた。

その時がくれば、必ずわかる。

何故なら、それは私がするべきことだから。

「私は何をすればいいの?」

マガナミのこの問いで、彼女はマガナミの答えを知る。

再び運命の重みを噛みしめるように、彼女は目を細めた。

そしてただ一言答える。

「その時がくればわかる」

マガナミは長い時間をかけて、その言葉を内に刻み込む。

そして彼女の瞳をまっすぐ見据えた。

「あなたがそういうのなら」

彼女はそれに無言で相槌を打つ。

音のなくなった空間には、役目を果たす者への励ましと、役目を終えた者への労いが満ちた。


(6/10)

- 206/232 -

[bookmark]



back

[ back to top ]

- ナノ -