28.生きている意味
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マガナミがゆっくりと目を開くと、そこは闇の中だった。
見渡す限り漆黒以外何も見えない。
物音もしないし、匂いもない。
足を踏み出そうとすると、地面の感触がなかった。
どうやら浮いているみたいだ。
直前に起きた出来事を思い出し、思う。
ここは死後の世界なのかしら。
だが、何もないと思っていたこの空間に、いつの間に現れたのか、少し先に人が佇んでいることに気づく。
こんなに暗いところでどうして見分けられたのかと言われると困るが、ともかくもそれは人影だった。
そして、その人影は音を立てずとこちらに近づいてくる。
その人影が誰だかわかっても、マガナミはそんなに驚かなかった。
「彼らと生きたい?」
人影は問い掛けた。
その問いは、確信に満ちた問いだった。
まるで最初から、その答えを知っているかのように。
「望んで叶うなら、生きたい」
マガナミははっきりと答える。
相手は困ったように笑った。
「そうだよね」
マガナミが向かい合っているのは、髪をポニーテールに結った、もう一人の自分だった。
『彼女』は宣旨を告げる巫女のように、澄んだ声を響かせた。
「あなたには二つの選択肢がある」
マガナミは生まれたばかりの赤子のごとき無防備さで、その鈴のような響きを拾う。
「選択肢?」
「一つは、このまま彼らと共に生きること。今なら、願えばそれが叶う。あなたがもう一つの選択肢を選ばなかった木ノ葉に、未来があったなら、という条件が付くけれど」
マガナミは彼女を見つめた。
彼女は穏やかな瞳でマガナミの視線を受け止める。
その目を見て、悟った。
私はきっと、もう片方を選ばざるを得ない。
そして彼女もそれを選んだのだと。
「もう一つは?」
「木ノ葉の過去を救うこと」
木ノ葉の里はかつて、天候操作による侵略の危機にさらされたことがあるという。
何者の仕業だったのか、それは未だに判明していない。
しかしその危機は一人の少女の力によって回避された。
「それが…『あなた』ね」
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