28.生きている意味
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「ウソだろ…そんなはず…」
「やはりきみはサラなのか!?」
今まで静かに佇んでいたカカシが弾けるように身を乗り出した。
マガナミは目を細める。
「サラ…井染の言葉で『名もなきもの』。私はそう名乗ったそうですね。あなたにはお世話になります、カカシさん」
「世話に『なる』?どういうことだ。本当にサラなのか…?」
「ちょっと待て。お前ら何の話をしてるんだ」
口を挟んだアスマは困惑顏でカカシを見た。
サクラもわけがわからない様子で問う。
「サラって、あの嵐の日に里を救ったっていう…?その人がマガ…彼女とどう関係があるっていうの…?」
しかし、チョウジといのは何かに思い至った顔をしている。
「私、一つ思い出したことがあるわ」
いのの声は少し硬い。
「私がまだ小さい頃、店番をしていた時にポニーテールの女の人が来たの。その人は私に花をプレゼントしてくれて…そうだ、その人と入れ違いであんたが来たんだわ、サクラ」
「わたし?」
「そう。あんたは会ってなかったのね。私も一度…ううん、その後もう一度だけ店に来たから正確には二度か、それだけしか会ったことないから、顔は忘れちゃってたんだけど…今、思い出した…」
信じられない思いが優っているのか、いのはそのまま口をつぐんでしまった。
「ボクも友達と喧嘩したときに助けてもらった女の人の顔、思い出したよ…」
「初めてきみに会ったとき、あまりに似ていたから驚いたんだ。だが、きみは当時のサラそのものだった。だから同一人物であるはずがないと思っていたんだが…」
急速にパズルが組み合わされてゆく。
信じられるはずがない。
だが本能が肯定していた。
こいつは、幼い日にベンチで出会った、あの不思議な女なんだ。
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