28.生きている意味
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すると、彼女は小さく首を横に振った。
「名前じゃないの」
「え?」
「『マガナ』は『忌むべき』、『ミ』は『もの』。『忌むべきもの』村の人たちは私をそう呼んだ。私に名前はないの」
「なんだって」
──マガナミ
そう呼ぶ度に、こいつは振り返って、はにかむように笑った。
オレたちは今までずっと、こいつのことを『忌むべきもの』と呼ばわっていたのか。
「お前…悪趣味なことさせるなよな」
マガナミは苦笑した。
「ごめんなさい」
そして、何かを訴えるような瞳でシカマルを見る。
「これが私なんだ、だからこれでいい。そう思ってたけど、やっぱり、嫌だな」
シカマルはマガナミを見つめ返す。
「名前、付けて」
「名前?」
「そう、私の名前。約束したでしょ」
「約束?」
突然、マガナミの顔がぶれた。
そこに昔の記憶が重なる。
──名前を付けてほしいの
──その時がくればきっとわかる
──忘れないでね
シカマルは目を見開き、息を飲んだ。
「まさか…」
「あの嵐の日、私は木ノ葉を救った。役に立ったでしょう?」
マガナミはゆるりと笑う。
時が静止したかのような空白があった。
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