生きている意味

28.生きている意味


(3/10)


すると、彼女は小さく首を横に振った。

「名前じゃないの」

「え?」

「『マガナ』は『忌むべき』、『ミ』は『もの』。『忌むべきもの』村の人たちは私をそう呼んだ。私に名前はないの」

「なんだって」

──マガナミ

そう呼ぶ度に、こいつは振り返って、はにかむように笑った。

オレたちは今までずっと、こいつのことを『忌むべきもの』と呼ばわっていたのか。

「お前…悪趣味なことさせるなよな」

マガナミは苦笑した。

「ごめんなさい」

そして、何かを訴えるような瞳でシカマルを見る。

「これが私なんだ、だからこれでいい。そう思ってたけど、やっぱり、嫌だな」

シカマルはマガナミを見つめ返す。

「名前、付けて」

「名前?」

「そう、私の名前。約束したでしょ」

「約束?」

突然、マガナミの顔がぶれた。

そこに昔の記憶が重なる。

──名前を付けてほしいの

──その時がくればきっとわかる

──忘れないでね

シカマルは目を見開き、息を飲んだ。

「まさか…」

「あの嵐の日、私は木ノ葉を救った。役に立ったでしょう?」

マガナミはゆるりと笑う。

時が静止したかのような空白があった。


(3/10)

- 203/232 -

[bookmark]



back

[ back to top ]

- ナノ -