28.生きている意味
(2/10)
「あの子は?」
「母親と妹と一緒に木ノ葉に保護されてる」
「そう、よかった」
「大丈夫だ。サクラといのが治療してるからな」
マガナミは二人に視線を送る。
二人は痛々しい表情を無理矢理崩し、ぎこちなく笑った。
マガナミは懸命に頬笑みを返す。
「ごめん。もう少しだけ、お願い」
いのとサクラは一瞬、動揺して身を固くする。
けれど、結局は覚悟を決めた様子で頷いた。
マガナミは気付いている。
もう自分が助からないことを。
それでもいのとサクラが必死に医療忍術を掛けていることを。
もう少しだけ時間がほしい。
だからもう少しだけ、無駄だとわかっていても、自分を治療してほしい。
その時が来るのを引き延ばしてほしい。
マガナミはそう言っている。
なんでだ。
「なんでだよ」
なんでこうなっちまった。
「お前は」
こいつは。
「これからだろ」
これからのはずだった。
――初仕事、どうだったんだ?
――がんばった!私、お礼言われた。…へへ。
――そうか、よかったな。
――うん!
――よし、そうだ!そのままキープ。
――ぷはぁっ!全然ダメだ。
――最初はそんなもんだろ。後は練習だ。
――はーい。
なにもかも、これからのはずだったんだ。
「なのに」
「シカマル」
自分の名を呼ぶマガナミは微笑んでいる。
何でこんな時に笑うんだ。
――私は、まだ、生きなければならない。
最初はこちらがどんなに気に掛けてやっても笑わなかったくせに。
何で今になって、お前は笑うんだよ。
――私、ここに居たい。この里で、みんなと暮らしたい。
そうだよ、こいつは変わったんだよ。
変わったばっかりなんだ。
「ありがとう、今まで」
今までなんて言うな、なんて残酷な言葉、口にできるはずもなかった。
「あなたに会えてよかった」
何も言葉が出てこなかった。
ただ、詰まった喉から絞り出すように、彼女の名を呼んだ。
「マガナミ」
(2/10)
*←|→#
[bookmark]
←back
[ back to top ]