生きている意味

27.夏の終わり


(7/9)


ニヤリと口端を引きつらせると、男たちは再び木の上に跳んだ。

上方からクナイが飛んできた。

寸でのところで、マガナミはその一投を避けた。

すぐに次のクナイが飛んでくる。

地面に転がってそれも交わした。

クナイは次々に飛んでくる。

それらをギリギリのところで交わしながら、マガナミはひたすら走った。

クナイはマガナミの避ける先を的確に衝いてくる。

だんだん息が上がってきた。

この人たち、わざと外してる。

マガナミが避けられるか避けられないかのところを狙ってクナイを投げている。

彼らの言葉通り、マガナミは完全に遊ばれていた。

マガナミは方向を転換して彼らの方へ走り出した。

彼らの真下に逃げ込もうと考えたのだ。

しかし、彼らとの距離が20メートルの辺りまで踏み込んだ時、突然地面が爆発した。

マガナミは吹き飛ばされて近くの木に叩きつけられる。

「おっとぉ、気をつけた方がいいぜぇ。この辺りの地面にゃトラップしかけたからなぁ」

下品な笑いが響いた。

マガナミは咳込みながら再び走り出す。

だが、先ほどのダメージで身体がいうことをきかない。

足がもつれた。

一本が脇腹を掠った。

痛みで短い悲鳴を上げる。

服が赤く染まる。

動きが格段に悪くなった。

少しずつ、身体に傷が走っていく。

このまま、なぶられて殺されるのだろうか。

左足にクナイが突き刺さり、マガナミはついに地面に倒れ込んだ。

男たちが近寄ってくる気配がある。

だが、もう身体を動かすことはできなかった。

彼らが何かを言っているが、自分の荒い息と心臓の音に遮られて何も聞こえない。

ここまでなの。

男がクナイを振りかざした。

――死にたくない!

自分の心からの願いに気付き、マガナミはこんなときだというのにジンとした。

絶望感を持って、生きなければならないと言っていた自分が、今は。

ああ、私、死にたくないんだ。

そう思えるようになったんだ。

嬉しかった。

誇らしかった。

――なのに。

男は高く掲げたクナイを振り下ろした。

――悔しい。


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