生きている意味

27.夏の終わり


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反射的に頭上を見上げた。

マガナミは胸騒ぎの正体に気付く。

背筋に冷たい戦慄が走った。

男が二人、樹上から挑発的な視線でこちらを見下ろしていた。

頭に額当てを巻いている。

木ノ葉ではない何かのマークに横一文字が走っている。

「ようやくお気づきか」

「おいおい、こいつ大丈夫かぁ?今の今までオレたちに気付かないなんてよォ」

マガナミは眉をしかめた。

ずっとつけられていたのだ。

多分、かなり前から。

悔しかった。

けれど、今はそれどころではない。

親子の身の安全を図らなければ。

二人を庇うように身を前に乗り出した。

すると、思いがけず、母親が叫んだ。

「言われたとおりにしたわ!チコを返してちょうだい!」

マガナミは虚を突かれて振り返る。

母親は泣きそうな顔をしていた。

男の子も母親の服の裾をギュッと握りしめて相手の男たちを睨んでいる。

マガナミは事の経緯をなんとなく把握した。

木ノ葉の忍を誘き出すように脅されたのだろう。

チコという少女を人質に取られて。

ひどいことをする。

ということは、あの男たちは自分のことを木ノ葉の忍だと思っているのだ。

男のうちの一人が姿を消した。

マガナミは身構える。

どこに行った?

マガナミにはわからない。

次に同じ場所に姿を現した時、その男は腕に小さな女の子を抱えていた。

「チコ!」

母親が悲鳴を上げる。

男の子も大声で叫んだ。

ふと目を覚ました少女が呼応して泣き声を上げる。

「お母さあん!お兄ちゃあん!」

マガナミは、彼らが快楽殺人者でないことを祈った。

もしも木ノ葉の忍を誘き出したいだけならば、目的が達せられた今、彼らにあの幼い少女を殺すメリットはない。

この親子にも、もう用はないはずだ。

ただ、一つ懸念されるのが、親子が助けを求めに木ノ葉に走ることを相手が恐れた場合だ。

だがそれでも、事が終わるまで拘束するか眠らせれば済むことで、命まで取る必要はない。

となれば、今は成り行きを見守るのが最善だと判断した。

余計な刺激を加えて、相手の考えが変わっては困る。

マガナミはただ、相手がまっとうな判断力を有する人物であることを願った。


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