生きている意味

27.夏の終わり


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ついこの前までアブラゼミが鳴いていた木ノ葉の里には、今はヒグラシの物悲しい鳴き声が響くようになっていた。

夏は、もうすぐ終わろうとしている。

けれどその日は、息を吹き返したかのような蒸し暑さで、強い日差しが燦々と降り注いでいた。

マガナミが大門の前を通りかかると、門番をしていたイズモとコテツがこちらに向かって手を振った。

「おーいマガナミ!手ぇ空いてるかー?」

マガナミは小さく首を傾げて、二人の元に走ってゆく。

門の側に女の人と小さな男の子が立っているのが見えた。

「どうしたんですか?」

問い掛けた瞬間、胸の中で何かが鳴った。

鈴のようにチリチリと鳴りながら、転がってゆく。

マガナミは動揺した。

今、自分の中のとても重要な何かが動きだそうとしている。

畏怖にも似た感情が、一瞬にして体内を駆け巡った。

何、今の。

しかし、それはほんの一瞬のことで、波が引くように、すぐに消えてしまった。

「いやな、このお母さんとボウズ、隣町まで送ってってやってほしいんだ」

コテツが女の人と男の子に片手を向ける。

「あの…この方は…?」

母親が控え目に口を開く。

「ああ、大丈夫ですよ。彼女もれっきとした忍です」

「えっ…」

こともなげにとんでもないことを言い出すコテツに、マガナミは思わず声を漏らすが、すかさずイズモが、片手の人差し指を口元に添えてマガナミを制した。

「道中不安だから忍の人についてきてもらえないかっていう話なんだが、あいにく手が空いてるやつがいなくてな。なに、隣町までは危険な道もない。何度も往復してるし、大丈夫だろ?」

「私はいいですけど、でも…」

「隣町までは近いし、ちょうど用事もあるので報酬はいりませんってことにするさ。それならいいだろ?」

そういう問題なのだろうかとは思ったが、人がいないのでは仕方がない。

断るよりはましだろうと、マガナミは承諾した。

「じゃ、頼んだぜ」

「行ってきます」


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