生きている意味

26.その後の二人


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オドオドと挙動不審になるのは、マガナミの素の性格なのだと、最近わかった。

他にも、観察眼が鋭いところや、土壇場で意外と度胸があることも。

あいつは日に日に表情豊かになっていく。



マガナミは与えられた仕事を丁寧にこなしていた。

依頼主からの評判も上々だ。

毎日、仕事を終えて帰ってくるマガナミの顔は充実していた。

仕事で関わった人たちのところに、時間を見つけて出向いたりもしているようである。



疲れているだろうに、帰ってからのチャクラコントロールの修行も欠かさない。

毎晩修行に付き合っているが、筋はなかなかいい方だと思う。

里の人間と比べて体得するスピードが速いというわけではない。

だがそれでも、センスは決して悪くはないと思っている。

というのも、里の人間で忍を志す者は、幼い頃からチャクラコントロールの練習をして育つ者が多い。

奈良家や秋道家、山中家のように、代々忍の職に就く者も大勢おり、チャクラに対する馴染みが深いのだ。

だが、マガナミはそうではない。

今までチャクラというものの存在すら知らなかったし、何事も年を重ねてからの習得は難しいものだ。

そのハンディを差し引いて考えると、むしろ体得スピードは速いくらいなのではないかと思う。

基礎からきちんと仕込んでいけば、いずれ木ノ葉の里の忍として活躍することだって可能だろう。

まあ、あいつが何に生きがいを見つけるかは、オレにもわかんねーけどな。

シカマルはもりもりと夕食をかっ込むマガナミを横目に見遣る。

そして、サワトと別れた日の夜のことを思い起こした。



あの日の夜、マガナミがそっと家を抜け出したことには気づいていた。

だが追わなかった。

一人部屋があるにもかかわらず家を出たということは、きっと一人で整理したいことがあるのだと思ったからだ。

あの日、マガナミとサワトの間には確実に何かあった。

あの短時間で二人の間に漂う空気は明らかに変わっていたし、サワト自身がそれを匂わせていたということもある。

だが、結局マガナミは何も話さなかった。

二人の間で何があったのか、それはわからない。

けれど、マガナミが話さないのなら、無理には聞くまい。

あいつが話したいと思った時に、聞いてやればいいのだ。

チョウジといのとも話して、そう決めた。

家を出てから二時間ほどして、マガナミは帰ってきた。

そのまま自室に戻ったのを足音で確認してから、自分も眠りについた。

その翌朝、ちょっとした騒ぎがあった。

マガナミの両目がほとんど開かないほどに腫れていたからだ。

第一発見者である母親はたいそう驚いたらしく、家中に響くほどの悲鳴が上がった。

氷嚢を宛がうマガナミを見て、男二人は何かあったのかと顔色を変えたが、「大事ない、しばらく出ていろ」という母の静かな視線に一時退散した。

後で、泣きはらしたようだと母親に耳打ちされた。

そうか、あいつ泣いたのか。

少し意外に思った。

そして気付く。

オレの知る限りでは、あいつが泣いたのは今回が初めてだと。

だが心配したわけではなかった。

むしろ、もう大丈夫だと、そう思った。

なぜなら、あいつはどこか吹っ切れた顔をしていた。


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