生きている意味

26.その後の二人


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翌日、アスマにやらせてほしいと伝えると、その日から一週間ほどレクチャーがあり、翌週から早速仕事が始まった。

マガナミの初仕事は、老夫婦の家の片付けだった。

身体がいうことをきかなくなってきており、少しずつ手の行き届かないところが出てきてしまったという。

マガナミは一部屋一部屋丁寧に掃除した。

今後、夫婦が自分たちで掃除しやすいように棚やものの配置も工夫した。

「ありがとう」

「また頼むよ」

ぎゅっと握られた、使い込まれた手が温かかった。

二件目の仕事は子守りだ。

やんちゃな子ども三人に振り回されて大変だった。

けれど、帰る間際に泣いて止めてくれた時は、やっぱり嬉しかった。

買い物、ペット探し、道案内、色々なことをやった。

色々な人と触れ合って、色々な人から「ありがとう」と言われた。

顔見知りもたくさん増えて、外を歩いていて声を掛けてくれる人も増えた。

毎日充実していた。

一日一日積み重ねるごとに、自分が成長している気がした。



一方で、シカマルとの忍術の練習も毎夜行っていた。

忍術の練習とは言っても、今はまだチャクラを感じる訓練をする段階だ。

体内を流れるチャクラを自然に感じられるようにならなければ、それをコントロールすることはできない。

心を無にして、自分の身体の中に意識を集中する。

そうして、身体全体を巡るチャクラの流れを知るのだ。

「どうだ?」

「うん、わかる、と思う」

「よし。んじゃ、そのチャクラを腹の辺りに留めるように意識してみろ」

「え、えぇ?留める?どうやって」

「どうやってって…下っ腹に力入れてだなぁ…とにかくやれ!身体で覚えるしかねぇよ」

「う、うん」

少しずつだが、前進している。



忍具の扱い方も習った。

撒きびしや煙幕は初心者でも扱いやすく、クナイはある程度のコントロールが要求されるので練習が必要だ。

これも折を見て練習を見てもらうことになっている。



日に日に、里に馴染んでいる気がして嬉しかった。

里の人間として、里のために働いて、感謝されて、笑顔を向けられる。

道行く人々と他愛のない挨拶を交わし、仲間と呼べる人たちと笑い合う。

ずっと憧れていた。

こんな生活に。

――あんたは生きて、生きて、生きて、一生分、この世の絶望を味わうの。

久々に母の声が聞こえた。

呪詛の声でしかなかったこの声も、今では懐かしい。

ごめんなさい、お母さん。

でも、もういいよね。

それだけの時が経った。

そして、その時はもう、元には戻らないのだから。



私、ここで幸せになります。




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