25.サワトと第十班
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二人が今までいた空間を一同は黙ったまましばらく見つめている。
そこにあるのは、彼らの存在を打ち消すような「無」だけだった。
丘に吹く風が、その「無」さえも四方に散らしていく。
シカマルのため息で、金縛りにあったかのように固まっていたマガナミたちはハッと我に返った。
シカマルは頭を掻きながらマガナミを見る。
「本当に何もなかったんだな?」
マガナミは一瞬キョトンとして、それからサワトと自分が二人きりでいた時のことだと気付く。
「うん」
シカマルは小さく首を振ると踵を返した。
「行くか。いつまでもこうしてても仕方ねーしな」
シカマルの言葉につられるようにみんな歩き始める。
そんな四人をマガナミが呼び止めた。
「待って!」
四人はこちらを振り返る。
顔には不思議そうな表情が浮かんでいる。
「あの…あのね、私…あの…」
呼び止めたはいいが、上手く言葉が出てこない。
口ごもるマガナミに、シカマルが笑った。
「ゆっくりでいいから、言ってみろよ」
シカマルの瞳はマガナミの心を落ち着かせる。
そうだ。
焦らなくても、この人たちは聞いてくれる。
「私、ここに居たい。この里で、みんなと暮らしたい。どうやったら里のみんなに受け入れてもらえるのか、まだわからないけど…でも、努力したい。みんなに受け入れてもらいたい。だから…ここに置いてください」
深く頭を下げた。
彼らへの思いの分だけ深く、深く。
頭を下げたまま、彼らの返事を待つ。
しかし、しばらく待ってみても声は返ってこなかった。
不安になって恐る恐る顔を上げる。
そこには四人の笑顔があった。
「そうやって顔上げてなさいよ」
「そうだよ。胸張って!」
「里のやつらの信頼を得る方法だってあるさ」
「んなに心配しなくても、お前なら大丈夫だよ」
彼らの言葉が、笑顔が、眩しかった。
温かかった。
マガナミの心は毬のように跳ねた。
「ありがとう」
マガナミは四人に追い付き歩き出す。
帰り道に、長く伸びた五人の影が並んだ。
20160514
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