生きている意味

25.サワトと第十班


(3/7)


「いや、そうは言っても、だからって…」

「これは、お前の親父さんが言ってたことだ」

アスマが口を挟む。

サワトは目を見開いた。

「父さんが?」

「ああ。お前にそういう人間が現れた時に、伝えるつもりだったって言ってたぜ」

サワトは考え込むように視線を落とす。

そしてかぶりを振った。

「そんなはずはない。情に溺れず、痕跡を残さず。これが父の口癖なんだ。わざわざ木ノ葉との繋がりを残すようなこと、示唆するはずがないよ」

「そんなことはないさ」

突然、サワトの横に男性が現れた。

サワトの肩が大きく跳ねる。

「父さん」

「ずいぶんと事を大きくしたな。お前のミスだ」

「…申し訳ありません」

サワトの父、サクイは自分に視線を合わせない息子を眺め、ため息をついた。

そして第十班のメンバーに視線を移す。

アスマは無言で頷いた。

自分たちのことは気にせず、続けてほしい。

そういう合図だと思った。

「彼らの言葉に甘えなさい」

「なんだって?」

サワトはサクイを振り返った。

サクイは驚きの中に反感を滲ませたサワトの瞳に苦笑する。

「彼らはお前を仲間と言い、また訪ねて来いと言っている。その言葉に甘えなさいと言っている」

「いつもの父さんの言葉とは思えないね」

その返答には苛立ちが混じっている。

「もちろん、基本的なスタンスは『情に溺れず、痕跡を残さず』だ。この大原則は変わらない。だが、各地に信頼できる人間を作っておくことも重要だ」

「今までそんな話、聞いたことないけど」

「信頼できる人間がどんな人間か、自分自身で実感しないうちにこれを伝えるのは危険だからな。やたらと情報をばら撒かれてはたまったものではない」

サワトの剣呑な視線が、少しだけ緩んだ。


(3/7)

- 179/232 -

[bookmark]



back

[ back to top ]

- ナノ -