25.サワトと第十班
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「いや、そうは言っても、だからって…」
「これは、お前の親父さんが言ってたことだ」
アスマが口を挟む。
サワトは目を見開いた。
「父さんが?」
「ああ。お前にそういう人間が現れた時に、伝えるつもりだったって言ってたぜ」
サワトは考え込むように視線を落とす。
そしてかぶりを振った。
「そんなはずはない。情に溺れず、痕跡を残さず。これが父の口癖なんだ。わざわざ木ノ葉との繋がりを残すようなこと、示唆するはずがないよ」
「そんなことはないさ」
突然、サワトの横に男性が現れた。
サワトの肩が大きく跳ねる。
「父さん」
「ずいぶんと事を大きくしたな。お前のミスだ」
「…申し訳ありません」
サワトの父、サクイは自分に視線を合わせない息子を眺め、ため息をついた。
そして第十班のメンバーに視線を移す。
アスマは無言で頷いた。
自分たちのことは気にせず、続けてほしい。
そういう合図だと思った。
「彼らの言葉に甘えなさい」
「なんだって?」
サワトはサクイを振り返った。
サクイは驚きの中に反感を滲ませたサワトの瞳に苦笑する。
「彼らはお前を仲間と言い、また訪ねて来いと言っている。その言葉に甘えなさいと言っている」
「いつもの父さんの言葉とは思えないね」
その返答には苛立ちが混じっている。
「もちろん、基本的なスタンスは『情に溺れず、痕跡を残さず』だ。この大原則は変わらない。だが、各地に信頼できる人間を作っておくことも重要だ」
「今までそんな話、聞いたことないけど」
「信頼できる人間がどんな人間か、自分自身で実感しないうちにこれを伝えるのは危険だからな。やたらと情報をばら撒かれてはたまったものではない」
サワトの剣呑な視線が、少しだけ緩んだ。
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