24.サワトとマガナミ
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わからないけど。
頭に浮かぶのはシカマルの笑顔だった。
――お前が里に居たきゃ、ずっと居ていいんだ。
「シカマル…」
無意識に言葉が漏れた。
ハッと我に返った時には、サワトは優しい笑みを浮かべていた。
「それが答えだね」
マガナミは顔を真っ赤にする。
「きみが望めば、あいつらは応えてくれるよ」
「そう、だね」
「きみがこの先、幸多き人生を送れることを祈ってる」
「ありがとう」
出会ったばかりの青年。
不思議な雰囲気を持つ青年。
自分と縁の深い青年。
自分の記憶は、まだ彼のことを村人だと言っている。
でも本当は、自分が生まれて死んで、それからずっと後に生まれるはずの青年。
本来出会うはずのなかった、私の子孫。
「あなたがいなくなった後、この記憶はどうなるの?」
「もともと存在しないはずのものだ。時が経てば消えてしまう」
「そう、なの」
もともと存在しないはずのものは、時が経てば、人々の記憶から消えてしまう。
それが自然の摂理なのだろうか。
きっとそうなのだろう。
それが一番正しい形に思えた。
そう思えたからこそ、マガナミは一つの可能性に気付いてゾッとした。
「じゃあ、元々この時代に存在しないはずの私が、ここからいなくなったら…」
シカマルや木ノ葉の人たちは、私を忘れてしまうの?
それは想像するだけで恐ろしいことだった。
みんなの中から、シカマルの中から、私の記憶が消えてしまう。
自分のことを仲間だと言ってくれたことも、自分を怒ってくれたことも、仲直りしたことも、ずっと木ノ葉に居ていいと言ってくれたことも、全部、全部。
マガナミは縋るようにサワトを見つめた。
サワトは、ただ、悲しそうに笑みを浮かべるだけだった。
20160506
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