24.サワトとマガナミ
(8/9)
再び、丘を風が吹きわたった。
サワトとマガナミの赤い髪が柔らかくなびく。
マガナミはサワトの話を聞いて安心した。
「そう。里を助けてくれたんだね」
サワトはバツが悪そうに頭を掻く。
「それは少し語弊がある。ボクらはボクらの役割を果たすためにそうしたんだ」
マガナミはゆるりと首を振った。
「それでもいい。ありがとう」
サワトは頷いて、気遣うような表情を浮かべる。
「…きみは、どうするの?」
マガナミは言葉に詰まった。
「…わからない」
「酷な話だけど、きみが元いた時代に帰るのは、きっとすごく難しい。きみは力をコントロールできないみたいだし、ここまでの時を超えたのも、命を失うかどうかという特殊な状況にあったからだ」
サワトはマガナミを伺う。
マガナミは両手を固く握って俯いていた。
「ボクたちと、来る?」
マガナミは顔を上げた。
「きみとボクたちは無関係じゃない。それどころか、とても縁の深い関係だ。みんな君を受け入れてくれると思う。それに、旅をしていれば、いずれ帰れる方法が見つかるかもしれない。もちろん、きみが帰りたいならの話だけど」
そこまで言うと、サワトはマガナミの反応を待った。
マガナミは唐突な提案にただうろたえている。
マガナミはどうしていいのかわからなかった。
この短時間で、自分と世界との関係性はあまりに大きく変わってしまった。
あまりに巨大な真実がマガナミの前に立ちはだかった。
目の前は、その真実に塞がれて何も見えない。
その壁の先を見据えるには、あまりに時間が短すぎた。
どうしたらいいのか、わからない。
(8/9)
*←|→#
[bookmark]
←back
[ back to top ]