24.サワトとマガナミ
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一方その頃、第一級機密文書の消失により殺気だった火影の執務室に、ある人物が訪れていた。
「して、今回の一連の件、どういうことかご説明いただきたい!」
きつい眼差しで綱手が睨み据えているのは、長郷一族の長、長郷サクイであった。
赤い髪に琥珀色の瞳。
その表情は好々爺然としており、彼が何を考えているのか、推し量ることはできない。
「今回はお騒がせいたしました。本当はもっと穏便に済むはずだったんですが。うちの息子の不手際で一騒動になってしまいましたな」
「今、鉱山集落に集まっているのはあなた方の一族か」
「いかにも」
「うちの通信文書を改ざんしたのは」
「我々です」
「木ノ葉に侵入している人間がいるんじゃないのか」
「ええ。うちの息子が」
サクイは、何の悪びれもなく淡々と受け答える。
その態度に綱手は思い切り眉を寄せた。
しかし、長郷一族の特殊性を鑑み、せり上がってくる怒りを必死にこらえる。
「目的は」
「一つは人探し。これはあなた方には関わりのない話だ。二つはあなた方に自覚してもらうこと」
「自覚?」
「そう。里はようやく復興したようだ。人々に笑顔も戻った。結構なことだ。だが、そういう時にこそ心が緩み、隙が生まれる。火影よ、木ノ葉の情報を狙っているものは多い。そういう輩が今を好機と伺っていることは知っていたか」
綱手はムッとしてがなる。
「言われるまでもない!警戒レベルも上げている!」
「だが、機密文書は奪われた。我々によって」
あくまで穏やかに切り返すと、サクイは懐から厳重な封印に守られた分厚い巻物を取り出した。
綱手は色めき立つ。
サクイはその巻物を綱手に手渡した。
「言ったでしょう、目的はあくまで自覚してもらうことだと」
綱手はグッと黙りこんだ。
「気をつけることだ。たった一つの情報が一つの里を滅ぼす」
「…肝に銘じておく」
「賢明な判断です」
それでは失礼する、と言い残し、サクイは姿を消した。
今まで緊張した面持ちで成り行きを見守っていたシズネは、大きなため息をついて綱手を見た。
「忠告、ということでしょうか」
「そうだな。…それからおそらく、周辺諸国へのけん制の意味もあったんだろう。考えてみれば、今回彼らは、鉱山集落に集まっているのが長郷一族だという痕跡を隠そうとする様子がなかった。わざと自分たちの存在を見せつけて、周辺諸国の手が伸びるのを防いだんだ。彼らのテリトリーには手を出さないという暗黙のルールがあるからな」
「…助けられた、と?」
「こちらとしてはな。しかし、彼らは助けようとしてやったわけじゃない。あくまで世界の均衡を保つためにしたんだろう」
「それが、長郷一族…」
「そういうことだ」
綱手は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。
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