24.サワトとマガナミ
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でも、それは違う、とマガナミは思う。
彼は単純に、自分の先祖だから特徴も似ているのだと言いたいのだろう。
だが、別々の一族だった井染と穂立見の特徴が等しくなるのは、マガナミがいた時よりももう少し先のことだ。
自分と彼の特徴が似ているのは、彼が自分の子孫だからではない。
自分が純粋な井染一族の人間であれば、自分と彼の特徴が似たはずはないのだ。
「あなたと私は確かに似てる。でもね、元々の井染一族の特徴は、黒髪に黒い瞳だった」
サワトはマガナミの言わんとするところに気付き、言われてみれば、と漏らした。
マガナミは更にポツリと呟く。
「そっか。私の父親、きっと穂立見の人だったんだ」
サワトは訝しげな表情を浮かべる。
「どういうこと?」
何故か話す気になった。
抵抗なく、自然と、口から言葉が零れた。
マガナミは自分の生い立ちを語った。
今まで誰にも、シカマルにさえ話したことのない話だった。
サワトは静かにマガナミの話に耳を傾けていた。
サワトの静かな瞳がそうさせるのか、マガナミの心も不思議と穏やかだった。
話し終えると、サワトは深く息を吐いた。
「シカマルから聞いていた。きみが故郷という言葉にそんなに怯えてたのは、そういうことだったんだね」
マガナミは曖昧な笑みを浮かべる。
そして、サワトとシカマルが自分の話をすることがあったのかと、新鮮なような、気恥かしいような気持ちになった。
マガナミは、サワトとシカマルが親しげな様子で、友として話しているところを想像する。
それは違和感のない光景に思えた。
彼の求めているものと、自分の求めているものが重なって見える。
マガナミは、サワトの瞳の奥を見据えた。
「あなたと私は同じ。居場所がほしかった」
サワトは一瞬止まって、柔らかく目を細める。
「そうだね」
「あなたは土地が。私は人が。それを木ノ葉に求めてた」
「うん」
「あなたが、故郷という言葉で思い浮かべるのはなに?緑豊かな大地?」
「…そうだね、本当は最初からわかっていた。土地はなくても、ボクにも故郷がある。長郷の仲間のいるところがボクの故郷だ。そして、たとえ辛くても、きみにとっての故郷はやっぱり井染なんだろう?」
マガナミは目を伏せ、それからゆるりと笑んだ。苦悩を内に抱えた笑みだった。
「うん」
マガナミとサワトはまっすぐ互いを見つめ合う。
やがてサワトが口を開いた。
「見逃してくれないか?」
マガナミは瞳を震わせる。
自分とサワトとの関係を思い、自分とシカマルたちとの関係を思う。
そして、木ノ葉の人々のことを思った。
「木ノ葉の人たちを困らせるようなこと、しないでほしい」
サワトは微笑する。
「大丈夫。何もしないよ。少し脅かしてはしまったけれど」
「脅かした?」
「ボクが木ノ葉に入り込んだもう一つの理由はこれなんだ」
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