04.焼肉Qにて
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「あん時の空気はフツーじゃなかった。あの威圧感…頭ん中がピリピリしやがった。そこだけ重力が強くなったような、周りと空間が切り離されたような感覚だった」
シカマルは、あの時の体験の残滓を探すように、視線を泳がせる。
口を噤んだシカマルに、アスマは考え込む表情を見せる。
「お前の状況分析力は周囲からも定評がある。そのお前が言うんだから、誇張されているわけではないんだろうな」
「それまで気配は全くなかった。里の誰にも気づかれずに入り込んでるって時点で、相手は相当な実力者ってことになる」
「その少女が、か」
「もしくは、少女の背後にいる誰かが、だ」
アスマは煙草の先端を灰皿に押し付けながら、大きく息を吐いた。
「なるほどな。何らかの目的を持って木ノ葉に送り込まれてきたのかもしれないってわけか」
「ああ。ったく、せめてまともに会話できれば、こっちも情報を引き出せるってのに。サクラに任せたくても、こうも不確定要素が多くちゃ、それもできねーだろ」
お手上げ、と言わんばかりに、シカマルは椅子の背もたれに寄りかかった。
アスマはあごをなでる。
「だったら、その子の警戒を解くのをサクラに手伝ってもらえばいい。見舞いに付き合ってもらったらどうだ。その子から話が聞けて、ある程度その子のことがわかったら、その後をサクラに任せるか、お前が引き継ぐか判断すればいい」
アスマの提案に、シカマルはしばし逡巡する。
そして、大きくため息をついた。
「めんどくせーが、それがよさそうだ」
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