生きている意味

24.サワトとマガナミ


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「ボクたちの一族にも、かつては故郷があった。遠い昔、まだ、忍という言葉が生まれる前の話だ」

故郷を追われたのか。

それ以来、彼らは故郷を持たず、各地を放浪している。

「あなたたちの故郷はどこに?」

サワトは複雑そうに口を歪める。

「…ここだよ」

マガナミは息を飲んだ。

ここ、つまり、木ノ葉の地。

「…そう、なの」

「ああ。凶事があって『長郷』と名を変える前、ボクらの一族は『穂立見』と名乗っていた。穂立見一族はかつて、ミナ地と呼ばれたこの辺り一帯を治めていたんだ」

「穂立見」

思いもよらない言葉が出てきたことに、マガナミは心底驚いた。

オウム返しにその単語を呟いたきり絶句する。

穂立見。

それは井染に攻め入ってきた異人たちの名ではないか。

ある日突然、今まで聞いたこともないような恐ろしい地響きと共に井染村になだれ込んできた浅黄色の服の異人たち。

辺り一帯はあっという間に炎に包まれ、井染村は死の村と化した。

穂立見と名乗った一族の冷たい瞳、嘲りの視線。

鉤を引っかけたように上がった口端、嘲笑。

人々の阿鼻叫喚、轟音を立てて崩れ落ちる大木。

焼けてはいけないものが焼けている臭い、恐怖の臭い。

マガナミは口元を手で覆った。

たまたま同名なだけなのか。

それとも、その穂立見一族なのだろうか。

いや、まさか。

そんなはずはない。

彼が話しているのは遠い昔の話だというではないか。

けれど、彼が口にしたキーワードはそれだけではない。

「ミナ地…」

「え?」

サワトがマガナミを伺うように首を傾げる。

「ミナ地は、井染の土地のはず…」

サワトは目を剥いた。

「井染だって?」


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