生きている意味

23.サワトとシカマル


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マガナミは逃げた。

がむしゃらに逃げた。

雑踏を駆け抜け、人にぶつかり、怒鳴り散らされても、構わず逃げた。



息が苦しい。

吐き気がする。

目の前が歪む。



あれは。

あれは。

間違いない。

彼は。



荒い息が鼓膜を揺らす。



井染の人間だ。



身体の節々が悲鳴を上げる。



どうして。

どうしてここにいるの。

どうして。

いまさら。



戻りたくない。

帰りたくない。

離れたくない。

ここに居たい。



助けて。



助けて!





「逃げないで」

すぐ側で声がした。

マガナミは反射的に叫び声を上げ、腕を振り回す。

しかし、振り上げた腕はいとも簡単に掴まれ、自由が利かなくなってしまった。

振りほどこうと必死にもがき、更に悲鳴を上げる。

「落ち着いて。大丈夫。きみの記憶は偽物だ」

自分の悲鳴の合間から、彼の低い声が届く。

マガナミはハタと抵抗を止め、彼を振り返った。

彼は静かな視線を返す。

マガナミは、憑き物が落ちたようにその場にへたり込んだ。

「きちんと話すよ。聞いてくれる?」

マガナミは小さく頷いた。





20160429


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