23.サワトとシカマル
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え?と漏らすサワトを横目に、シカマルは声を張り上げた。
「おい!マガナミ!」
道を歩く人々の中の一人がパッと顔を上げる。
「なに?あの子、マガナミ?」
サワトがシカマルに声をかける。
その声に僅かに動揺の色が見られたような気がしたのは気のせいだろうか。
「ああ。ちょうどよかったな」
紙袋を抱えたマガナミがパタパタと掛けてくる。
「シカマル!」
「よっ」
マガナミは二人の前で立ち止まった。
紙袋が乾いた音を立てる。
中にはオレンジやレモンが詰まっていた。
軽く息を弾ませている。
「買い物か?」
「うん」
マガナミはチラリとサワトに目を移した。
シカマルはサワトに親指を向ける。
「こいつがあのサワトだ。流サワト。オレたちと同じ班の」
「サワト」
「やあ」
サワトは片手を上げた。
「きみの話はシカマルからよく聞いてるよ、初めまして」
「は、初めまして」
二人はごくありふれた初対面の挨拶を交わした。
シカマルはそれを横で見守っている。
しかし、すぐに眉をひそめた。
マガナミの様子がおかしいことに気付いたからだ。
緊張気味ながらも笑みを浮かべていた彼女の表情は、やがて不思議そうな表情に変わり、次第に何かを考え込むように視線を伏せる。
何を考えているんだ?
何が気にかかっている?
マガナミはゆっくりとサワトに視線を合わせた。
その瞳が見る見るうちに見開かれていく。
そして次の瞬間、崩れるように尻餅をついた。
投げ出された果物が辺り一面に散らばる。
なんだ?
どうしたってんだ?
様子が一変したマガナミに、シカマルの警報が鳴る。
マガナミの顔には、あからさまな恐怖が浮かんでいた。
反射的にサワトを振り返る。
サワトからは何の表情も読み取れなかった。
能面のような顔をしている。
「いや…」
言葉を発するや否や、マガナミはもがくように立ち上がり、全速力でその場から駆け出した。
「お、おい!」
シカマルはマガナミを追って足を踏み出し掛けたが、その場を離れようとするサワトを見て取り、彼の前に立ちはだかった。
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