23.サワトとシカマル
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――いつまでも、こうしてはいられないよ。
夏祭りの日にマガナミが呟いた、予感めいた一言。
あの時自分は「マガナミは何を感じ取っているのだろう」そう思っていた。
しかし、後になって思えば、あの時予感を覚えていたのはむしろ自分の方だったのかもしれない。
あの時、珍しくよく喋るマガナミを見ていて、ある事実に気づいた。
その時から微かな予感が胸の奥底で燻っていたような気がする。
何故今までその可能性に気付かなかったのか。
何故こんなにも示唆的な要素を結びつけることができなかなかったのか。
それは作為的な工作が原因とも思えたし、自分の無意識がその事実を避けたのかもしれないとも思えた。
どちらにせよ、偶然か必然か、その時は唐突に訪れた。
「ようやく自由に出歩けるようになったのかよ」
「まあね。恐ろしいほど退屈な毎日だったよ」
「だろうな」
シカマルは、ようやく回復したサワトと里を歩いていた。
サワトは外を出歩くのが本当に久しぶりのようで、気持ちよさそうに伸びをし、大きく深呼吸している。
「この里の空気は本当に綺麗だなぁ」
「なにを改まって」
「だってさぁ、ホントに久しぶりなんだよ。息が詰まりそうだったよまったく」
「お前ほど『息が詰まる』って言葉が似合わない人間も珍しいな」
「言ってくれるなぁ」
久しぶりに見る清々しい表情のサワトに、シカマルもホッと息を吐く。
やれやれ、ようやく一安心だな。
「そういえば、楽しかった?夏祭り」
サワトの問いに、ああ、とシカマルは小さく頷く。
「思い思いに楽しんでたみたいだな」
サワトは小さく吹き出した。
「なんだよそれ。シカマルは?」
「ん?ああ…まあまあだ」
「左様ですか」
サワトは肩を竦めた。
「そういえば、マガナミな、お前会いたがってたろ?あいつもお前が回復したら会いたいって言ってたぜ」
サワトは一度大きく瞬きして、それからふうんと笑う。
「ボクが家で大人しくしてる間に彼女はずいぶん積極的になったらしいね」
「ま、そうだな」
おっと、とシカマルは声を上げる。
前から歩いてくる人物に気付いたからだ。
「噂をすれば、だ」
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