22.はじめての夏祭り
(8/9)
突然空に大きな花が咲いた。
続いて何かを打ち上げたような重低音が響く。
マガナミは驚いて目を見開いた。
ワッと会場が沸く。
皆一斉に夜空を見上げた。
花は大きく開いたかと思うとすぐに散っていく。
しかし、後から後から、様々な色の花が咲き誇った。
「きれい…」
「花火、始まったわねー」
いのたち三人が戻ってきた。
「ずいぶん遅かったな」
シカマルが呆れ顔を見せると、サクラがチョウジを親指でさし示す。
「ありとあらゆる食べ物屋で止まるのよ」
シカマルは乾いた笑いを漏らした。
「マガナミ、これが花火よ。綺麗でしょう」
いのがマガナミに話し掛ける。
マガナミはまじまじと空を見上げたまま、顔だけで頷いた。
マガナミは、初めて見る華やかで迫力のある花火に魅入られていた。
どんな手品を使っているのだろう。
空に花を咲かせるなんて。
それもこんなに大きな、こんなにたくさんの。
色々な形の花が次々に打ち上がる。
一瞬で花開いては、一瞬で散っていった。
その度に夜空が明るく輝き、人々の歓声が上がる。
「すごい…こんなの初めて…きれい…」
ああ、この里に来てから、本当に初めての体験をたくさんした。
初めての感動をたくさん味わった。
これはきっと、その中でも指折りの経験だ。
「連れてきてくれてありがとう」
感嘆のため息とともに漏らしたお礼の言葉に、四人が笑みを零したのがわかった。
花火はいよいよクライマックスに差し掛かり、空を埋め尽くすほど花が咲き乱れる。
人々の歓声も一層大きくなった。
(8/9)
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