22.はじめての夏祭り
(7/9)
それからしばらく世間話をした後、いのとサクラは飲み物を買いに、チョウジは食べ物の追加調達に、屋台の方へ歩いていった。
マガナミとシカマルは二人、野原に座ったまま、賑わう会場を眺める。
人々の表情や声がキラキラ輝いて、赤青様々の電飾に更なる色どりを添えていた。
「里の人間とか、里外の人間とか、この橋からこちら側は自国でそちら側は他国とか、小せえことで争ってるよな、人間ってやつは」
シカマルはポツリと呟いた。
マガナミはシカマルを横目で見る。
彼の視線は夜空に向いていた。
「前に見た夕焼けもよかったけど、夜空もいいもんだな」
シカマルの言葉につられるように、マガナミは夜空を見上げる。
「空見てっとよ、時々、自分がどうしようもなくくだらねえことに汗水流してるんじゃねーかって気にさせられることがある。広大な大地、天井のない空に勝手に線引いて、けん制し合ってよ。けど、当の大地や空は、そんなこと全く関係なしにそこに存在するだろ?」
マガナミはコクンと頷く。
「結局、人間のやってる事なんて、取るに足りない小さなことでしかねーんだ。この大きな夜空の前じゃ、ほんのちっぽけな塵みたいなもんだ」
マガナミは黙ってもう一度頷いた。
「お前が、どんな過去抱え込んで悩んでるのかはわかんねーけどよ」
マガナミは、突然自分の話になったことに驚いてシカマルを見る。
「どうしようもなく疲れちまった時は、空眺めてボーっとすっと…」
話しながらシカマルはマガナミに向き直った。
「いいんだぜ?」
至近距離で二人は顔を合わせる。
そこには大きな笑みがあった。
マガナミの心臓は大きく跳ねた。
今日のシカマルはよく笑う。
マガナミはドギマギして、どうしていいのかわからなくなってしまった。
目のやり場に困り、夜空に視線を転じる。
空には星が輝いていた。
チラチラと至る所で瞬いている。
まるで笑っているように見えた。
その星の瞬きに、地上の人々の笑い声が混ざる。
人々が幸せそうに笑い、星が瞬く。
そうか。
マガナミは思った。
きっと、みんなの幸せな気持ちや笑い声が、空に昇って星になるんだ。
だから星は、あんなにきれいに輝くんだ。
人々の軽やかな声が、地上を飾る電飾が、光の靄となって空へ昇る。
その靄は空に留まり、やがて星になる。
――私のこの気持ちも、きっと空へ昇って星になるんだ。
「空はいいぜ。でかいし、果てがない。どこの国の人間だって、結局同じ空を見上げるんだ。必ず誰かと繋がってる。お前と、オレたちもだ」
シカマルの声にマガナミの胸はまた一つ高鳴る。
「だろ?」
マガナミは目を細めて頷いた。
「うん」
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