生きている意味

22.はじめての夏祭り


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それからしばらく世間話をした後、いのとサクラは飲み物を買いに、チョウジは食べ物の追加調達に、屋台の方へ歩いていった。

マガナミとシカマルは二人、野原に座ったまま、賑わう会場を眺める。

人々の表情や声がキラキラ輝いて、赤青様々の電飾に更なる色どりを添えていた。

「里の人間とか、里外の人間とか、この橋からこちら側は自国でそちら側は他国とか、小せえことで争ってるよな、人間ってやつは」

シカマルはポツリと呟いた。

マガナミはシカマルを横目で見る。

彼の視線は夜空に向いていた。

「前に見た夕焼けもよかったけど、夜空もいいもんだな」

シカマルの言葉につられるように、マガナミは夜空を見上げる。

「空見てっとよ、時々、自分がどうしようもなくくだらねえことに汗水流してるんじゃねーかって気にさせられることがある。広大な大地、天井のない空に勝手に線引いて、けん制し合ってよ。けど、当の大地や空は、そんなこと全く関係なしにそこに存在するだろ?」

マガナミはコクンと頷く。

「結局、人間のやってる事なんて、取るに足りない小さなことでしかねーんだ。この大きな夜空の前じゃ、ほんのちっぽけな塵みたいなもんだ」

マガナミは黙ってもう一度頷いた。

「お前が、どんな過去抱え込んで悩んでるのかはわかんねーけどよ」

マガナミは、突然自分の話になったことに驚いてシカマルを見る。

「どうしようもなく疲れちまった時は、空眺めてボーっとすっと…」

話しながらシカマルはマガナミに向き直った。

「いいんだぜ?」

至近距離で二人は顔を合わせる。

そこには大きな笑みがあった。

マガナミの心臓は大きく跳ねた。

今日のシカマルはよく笑う。

マガナミはドギマギして、どうしていいのかわからなくなってしまった。

目のやり場に困り、夜空に視線を転じる。

空には星が輝いていた。

チラチラと至る所で瞬いている。

まるで笑っているように見えた。

その星の瞬きに、地上の人々の笑い声が混ざる。



人々が幸せそうに笑い、星が瞬く。



そうか。

マガナミは思った。

きっと、みんなの幸せな気持ちや笑い声が、空に昇って星になるんだ。

だから星は、あんなにきれいに輝くんだ。

人々の軽やかな声が、地上を飾る電飾が、光の靄となって空へ昇る。

その靄は空に留まり、やがて星になる。

――私のこの気持ちも、きっと空へ昇って星になるんだ。

「空はいいぜ。でかいし、果てがない。どこの国の人間だって、結局同じ空を見上げるんだ。必ず誰かと繋がってる。お前と、オレたちもだ」

シカマルの声にマガナミの胸はまた一つ高鳴る。

「だろ?」

マガナミは目を細めて頷いた。

「うん」


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