生きている意味

22.はじめての夏祭り


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やぐらの方から人影が三つこちらに近づいてきた。

女性陣が戻ってきたようだ。

「あー踊った踊った!」

「やっぱ祭りといったら盆踊りよねぇ!」

いのとサクラは髪を整えながらチョウジの横にすとんと座った。

マガナミもシカマルの横に座り込む。

その横顔に陰があるような気がして、シカマルは眉を顰めた。

なんだ?

それとなくマガナミを観察する。

盆踊りの輪に加わるまでは、マガナミはものすごく楽しんでいたはずた。

盆踊りの最中だって、輪に交じって気持ちよさそうに踊っていた。

マガナミの心境を変化させる要因は全く見つからない。

「どうしたんだ?浮かない顔してるぜ」

シカマルはさり気なさを装い問い掛ける。

マガナミは「えっ」と驚いた顔をして、一瞬ごまかそうかどうか考えているような表情を浮かべ、やがて視線を伏せた。

寂しそうな、何かを諦めたような笑みが浮かんでいた。

「今日、すごく楽しくて…」

シカマルは頭を掻く。

「楽しんでる人間のする顔じゃ、ねえな」

マガナミは困った顔になった。

「私、お祭りに参加するのって初めてなんだ」

「そうなのか?」

「うん。今までは…参加させてもらえなかったから」

マガナミは再び諦めたような笑みを浮かべた。

この笑み、そうだ、彼女に初めて会った頃に見た笑みだ。

ふと横に気配を感じる。

他の三人も話に耳を傾けているようだ。

彼女が自分から自身の話をするのは珍しい。

「今日が楽しければ楽しいほど、思い知るの。…私、村ではやっぱり受け入れてもらえなかったんだって」

シカマルは黙ったまま続きを待つ。

「村にも年に一度、例大祭っていう大きなお祭りがあって、その日は村中の人が会場に集まるの。何をやってたのかはわからない。けど、こうやってみんなでごはん食べたり、踊ったりしてたのかなって、今は思う。私はいつも、外から会場を見てた」

いのとサクラが怒りとも同情とも取れる呻き声を上げた。

「胸がすごく重くて、頭がボーっとなって、足がフラフラして…それでも会場を眺めてた。あの頃はわからなかったけど、今ならわかる。それが、寂しいって気持ちなんだって。私、もう知ってしまった。寂しいって気持ち、温かいって気持ち。もう、一人でいられる自信、ないの」

マガナミは口元を震わせた。

「今、すごく幸せだから、寂しくなるの。村の人たちとの絶望的な距離を思い知らされるから。今、すごく幸せだから、不安になるの。ずっとこのままじゃいられないことを意識させられるから。私…これからどうすればいいか…わからないんだ…」


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