生きている意味

22.はじめての夏祭り


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「よっぽどおいしかったのねー」

いのはわたあめ屋を振り返り振り返り歩くマガナミを見て苦笑した。

「フランクフルトとか焼きそばとかじゃがバターもあるのにねぇ」

両手に手さげ袋、口の中に溢れんばかりの食べ物を詰め込みながらチョウジが頷く。

「チョウジ…相変わらずね…」

サクラはチョウジを見て口元を押えた。



その後、更に色々な出店に立ち寄りながら、一行は広場に辿り着いた。

中央では、人々がやぐらを囲んで踊りを踊っていた。

一重の輪になって、ゆっくり周囲を回りながら、手を叩いたり、頭上に掲げたり、一回転したり、みな笑顔で楽しそうに踊っている。

女性陣はその輪に加わっていき、男性陣は側の野原に腰を落ち着けた。

いのとサクラはすぐに拍子を覚え、気持ちよさそうに踊っている。

マガナミは慣れない動きが多いのか、しばらくぎこちない動きをしていたが、見よう見まねで踊っているうちに、やがて周囲の動きに馴染んでいった。

「マガナミ、ずいぶん明るくなったね」

チョウジがやぐらに視線を向けたまま口元を緩めた。

「ああ」

シカマルも輪になって踊るマガナミを見遣る。

「表情も柔らかくなった」

「そうだな」

「言葉も流暢になってきたし」

「だな」

「自分から人に話し掛けるようになった」

「ああ。…なんだよ、どうしたんだ?」

「…ねえ、シカマル」

チョウジの声色が曇った。

シカマルは怪訝に思い、チョウジの顔を見る。

「鉱山集落に集まってるっていう一族とマガナミ、やっぱり関係ありそうなの?」

シカマルは僅かに眉を寄せた。

そうか、心配してるんだな、マガナミのこと。

「…まだわかんね。けど、集落に集まってる一族は、長郷一族でほぼ間違いないらしい」

「長郷一族…昔、木ノ葉の危機を教えてくれた一族だよね」

「ああ。だが、別に木ノ葉の味方についたってわけじゃねえ。世界情勢の均衡を保つために必要だから木ノ葉に情報を流しただけだ」

「それって…」

「今回も味方とは限らねえってことだな」

チョウジはしばらくの間口を噤み、またポツリと話す。

「シカマルはどう思うの?長郷一族とマガナミ、関係あると思う?」


シカマルは小さく息を漏らした。

「オレ、あいつに聞いたことあんだよ。長郷一族って知ってるかって。知らないって言ってた。あいつは嘘はつかねーよ。少なくともあいつは長郷一族を知らない。関係ないか、もしくは利用されてるだけだ」

チョウジはホッと息を吐く。

「そっか。ボク安心したよ。シカマルがマガナミを疑わなくちゃならないんだとしたら、悲しいなって思ってたから」

シカマルは、チョウジらしいやと笑った。

「けど、長郷一族が何をしようとしてるのかは、まったくわかってねんだ。なぜ鉱山集落に集まっているのか。なぜわざわざそれを悟られるように情報操作をしたのか。その混乱に乗じて木ノ葉に侵入している人間がいるのか。いるとしたら何が目的なのか…」

「問題は山積みって感じだね」

「まーな」

「けど、もし木ノ葉に害をなそうとしてるんだとしたら、黙って見過ごすわけにゃいかねえ」

「…うん、そうだね」


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