21.まるで蕾が開くような
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チョウジはシカマルの右手を取った。
それからマガナミの左手を取る。
そして二人の手を合わせて握らせた。
「わっ」
「ひゃっ」
二人は声を上げる。
「仲直りっていうのは、こうやるんだよ」
チョウジはにこにこしながら言った。
「ボクも昔教えてもらったんだ」
二人はドギマギしながら手を握っている相手とチョウジを交互に見比べる。
チョウジは満面の笑みを浮かべている。
その顔は、二人の心に僅かに残っていたしこりを完全に取り除いた。
二人の表情が徐々に緩んでゆく。
「ほら、もう大丈夫でしょ?」
シカマルは、敵わないといった様子で笑った。
「そうだな」
「マガナミは?」
「うん!ありがとうチョウジ。…ありがとう、シカマル」
マガナミはにっこり笑った。
屈託のない笑顔だった。
チョウジとシカマルは、本日二度目の大きな驚きを味わっていた。
あまりに突然だったので、ただただ驚くことしかできなかった。
彼女は自分たちが思っているよりも後方にいたようだ、ついさっきまではそう思っていたが、今はこう言わざるを得ない。
彼女はこの数日で自分たちが思っているよりもずっと前に進んだのだ、と。
マガナミの笑みは、ずっと春を待ち、身を固くしていた蕾がようやく開いたような、そんな初々しさに満ちていた。
シカマルの様子を伺うと、今は驚きの表情が勝っているものの、その中に喜びが見え隠れしているのがわかった。
ボクたちとマガナミの、そしてシカマルとマガナミの関係は、今日を境に変わっていくんだ。
チョウジは明るい気持ちでそう思った。
チョウジの予感を後押しするように、鹿威しが小気味よい音を奏でた。
20160416
(9/9)
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