21.まるで蕾が開くような
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マガナミは、やはり縁側にいた。
そっと角から覗いてみると、その横顔にはどこか影があるように見える。
彼女の好きな鹿威しの音も、耳に入っていないように思えた。
「マーガナミ」
チョウジは明るく声を掛ける。
マガナミはチョウジに気づき、頬を緩めた。
そして、その後ろからついてきたシカマルの姿にピタリと動きを止める。
「あ…」
途端に辺りに気まずい空気が満ちた。
あまりの気まずさに、チョウジは一瞬めげそうになる。
しかし、気力を振り絞って声を発した。
「こーゆーのは、時間が経てば経つほど、気まずくなっちゃうんだよ。ほら、二人とも」
二人は遠慮がちに距離を詰めて向かい合う。
チラリチラリと相手を盗み見るように視線を送るが、なかなか話し出す気配はない。
もう一度間に立ってとりなす必要があるかとチョウジが口を開きかけた時、意外なことにマガナミの方から言葉を発した。
「シカマル…」
唇を震わせ、か細い声でやっと絞り出す。
「シカマルが怒ったの、当然だよ。私…みんなのこと、信じられなくて、自分のことしか考えてなくて、そのせいでチョウジが…」
マガナミは悲痛な面持ちでチョウジを見た。
チョウジはそんなことはない、と首を振る。
「大切な仲間、危険な目に合わせた…」
「いや…」
シカマルは口ごもる。
マガナミは続けた。
「それに、大事な治療中に勝手に処置室に入って、みんなの邪魔して…私…」
マガナミはシュンと視線を伏せる。
「いや、あん時はオレが悪かったんだ」
シカマルは頭を掻いた。
「お前はソライル草を届けようとしただけだ」
「…シカマルは悪くない」
うんうん。
いい感じだ。
チョウジは笑みを浮かべて成行きを見守る。
「んなことねーよ。お前の気持ちも考えねーで、自分のイライラした気持ちぶつけただけだ」
「あ、当たり前だよ。それだけのこと、したんだし…」
「してねーって。お前の境遇とか気持ちとか考えりゃ、仕方ねーことだったさ」
シカマルの言葉を聞いた途端、マガナミはひどく傷ついた顔をした。
「し、仕方ないなんて、言わないで!」
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