21.まるで蕾が開くような
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「あんた、まだマガナミと仲直りしてないんだってぇ?」
いのは呆れ顔でシカマルを見た。
「うるせーなぁ」
「うるせーなぁ、じゃないわよ!あんたから謝ってやんなさいよ」
二人がまだ仲直りできていないらしいという話をアスマから聞いたいのは、シカマルに発破をかけるべく彼を呼び付けていた。
自分たちに素直に頭を下げるマガナミの様子を見た限りにおいては、こんなに仲直りに手こずるとは思えなかったのだが。
やはり怒鳴られたことに対する恐怖心が、シカマルに声を掛けることを躊躇させているのだろうか。
シカマルもシカマルだ。
マガナミがどんな思いでいるか、わからないはずもないだろうに。
確かにシカマルが怒ったことも理解できる。
なんだかんだいって一番マガナミを気にかけていたのはシカマルだ。
マガナミを裏切った、そんな風に思われたのが悔しいのだろう。
けれど、チョウジのためにソライル草を持ってきたマガナミを頭ごなしに怒鳴りつけたのはシカマルが悪い。
シカマル自身だって反省していたように見えたのだが。
まったく、いつものシカマルなら、めんどくさいからって自分から折れるのに。
今回に限ってどうしちゃったのよ。
シカマルはふいと目を背ける。
「あいつが目ぇ合わせねーんだよ」
落とすように呟かれたシカマルの言葉に、いのはポカンと口を開けた。
あらら?
シカマルの精神状態がうっすら見えて、いのは口元がむずがゆくなるのを感じた。
珍しいこともあるものだ。
どうやらマガナミが自分を避けることに傷ついているらしい。
シカマルが他人を気にして二の足を踏むなんて。
いのはこれ見よがしにため息をつく。
「あのねぇ、マガナミの性格考えてよ。あんなにきつく怒鳴られた後で、あんたの目なんて見られると思う?」
シカマルはむっつりしたまま黙っている。
「あの子、あんたに謝りたいのよ。あんたが何で怒ったのか、ちゃんとわかってたわよ。信じなくてごめんなさいって、私たちに言ってた。あんただって、ホントはあの子の気持ちわかってるんじゃないの?」
シカマルは、これまた珍しく、しばらく悶々とした様子でそっぽを向いていた。
が、やがて乱暴に頭を掻きむしって頷く。
「わーったよ!謝りゃいんだろ!謝りゃあ!」
いのは満足げに鼻を鳴らした。
「そうよ。最初からそうすればいいの。まったく手間掛けさせるんだから」
シカマルは苦笑する。
「お前は相変わらずお節介だな」
「そのお節介に感謝することになるのよ」
「へーへー」
いのはすっきりした表情のシカマルを見て、ホッと胸を撫で下ろした。
やれやれ、これで何とかなりそうかしら。
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