21.まるで蕾が開くような
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マガナミは庭の縁側にポツンと座っていた。
廊下を歩いてゆくと、気配に気づいたマガナミが顔を上げ、少し驚いた顔をした。
「アスマ」
「よっ」
マガナミは立ち上がりかけたが、アスマはそれを制す。
そして自分もマガナミの傍に腰を落ち着けた。
アスマは一息ついて静かに庭を眺める。
鹿威しが石を打つ音が軽やかに響いた。
この鹿威しが好きで、マガナミは日がな縁側に座って庭を眺めていると、前にシカマルが話していた。
まったくそのとおりだと、アスマは目を細める。
しかし、いつもは明るい表情で眺めているであろう彼女の顔は、今は沈んで見える。
チラリとこちらを盗み見たマガナミと目が合った。
アスマはフッと笑ってマガナミの方に身体を傾ける。
「まだ仲直りできてないんだってな」
マガナミは視線を伏せた。
「上手く謝れないのか?」
コクリと頷く。
「シカマル、目を合わせてくれないから…」
アスマは目を見開いて、ため息をつき、それから頭を掻いた。
シカマルが他人を避ける?
どうしたというのだ。
あいつらしくもない。
「そうか…。あいつもあいつで気まずいのかもしれないな」
とりなすように口にする。
「気まずい?」
「ああ」
マガナミを慰めるつもりで口にしたことだったが、これは意外と正しいのではないかという気がしてきた。
「あいつだって、お前の思いがわからないほどバカじゃないさ。お前が、シカマルの怒りの奥にある思いを汲み取ったようにな。だからこそ、お前を怒鳴っちまってバツの悪い思いをしてるんだろう」
マガナミはオドオドと視線を彷徨わせた。
「シカマルは間違ってない。悪いのは…迷惑かけたのは、私。そんな風に思うこと、ない」
「そうかな。オレから見れば、あん時のあいつは感情的すぎたな。反省するべきだ」
マガナミが目を大きく瞬かせる。
アスマは大げさに肩を竦めてみせた。
「シカマルは…怒ってるんじゃ、ないの?」
アスマは首を振る。
「違う。と、オレは思うがな」
マガナミの瞳に小さく光が宿った。
「仲直りの助けになったかな?」
マガナミは力いっぱい頷いた。
「うん、ありがとう」
やれやれ、これで何とかなりそうかな。
アスマは胸を撫で下ろした。
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